2、コガラスマルVSシャドウマスクVSRAIHA

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2、コガラスマルVSシャドウマスクVSRAIHA

『閃風忍者コガラスマル』  闇から闇を飛び移り、人の世を影ながら守る忍の者。  少年忍者コガラスマルも、そんな忍の者の一人である。  普段は山奥の秘境である忍の里で、姉の沙織と師匠である鬼神居士と共に暮らしているが、事件があれば即出陣!  閃風忍者へと転身し、数多の忍術で悪を成敗する。  …しかし、その変幻自在の忍術も、対峙した闇の仮面の前には無力だった。 『シャドウマスク』  髑髏があしらわれた漆黒の仮面で、着けた者に闇の力を与える。   本来は『夜の民』と呼ばれる組織が所有していた未知のオーパーツだったが、組織に父親を殺された神月竜生が奪取した。  装着すると、漆黒の仮面はそのまま彼の素顔となり闇の鎧とも呼ぶべき皮膜が身体を包み込む。  その力は闇そのもの。  暗闇から暗闇を移動し、身体を闇に変換することすら可能となる。  しかし、その代償は大きい。  それでも、彼は復讐鬼となって組織と対峙し闇の仮面の力を振るう。  自らの命を対価として。  崩落から脱出した二人は、外に広がっていた瓦礫の街で出会い、戦闘になった。  忍の者以上に闇を操るシャドウマスクは、コガラスマルの忍術を悉く圧倒し、遂には完全封殺するに至った。  既に、シャドウマスクの指はコガラスマルの首筋を締め上げ、とどめを刺さんとしている。  後ほんの数ミリ、指先に力を入れればそのままへし折れてしまうだろう。 「…何か言い残すことは?」  戯れか、情けか、シャドウマスクはコガラスマルに問い掛けた。 「あ…アンタさ、家族の名前って言えるかい…?」  …錯乱したか。  そう思ったが、シャドウマスクはすぐに考え直した。  コガラスマルの力量は、戦った自分が良く知っている。  まだ少年ではあるが、忍者としての能力は本物であり、それに見合う矜持も備えているた。  そんなコガラスマルが、死を前にしたからといって錯乱したとは思えなかった。 「…どういう意味だ?」 「解らないんだ…オイラには姉ちゃんと師匠がいる…。なのに、顔が出てこないんだ…。名前は解るのに…小さな頃から一緒だった筈なのに…」 「バカな…そんな事がある訳がない」  そう返したが、シャドウマスクの心は著しく乱されていた。  まさかと思い、両親の顔を思い出そうとしたが父親しか浮かんで来ない。  しかも、顔以外の情報が何もなかった。  どんな名前で、どんな声をしていたのか、今までどんな会話をしたのか、まるで思い出せなかった。 「もう楽にしてくれ…オイラは怖い…。このままじゃオイラがオイラでなくなっちまう…」  シャドウマスクが指先に力を込める。  小さな音が指へ伝わり、コガラスマルは手足をだらしなく伸ばして動かなくなった。 「…さらばだ」  コガラスマルを地面に寝かせ、シャドウマスクはもう一度考え始めた。  改めて思い返すと、自分の記憶には家族以外にも曖昧な部分がある。  今までどんな敵と戦ってきたのだろう。  倒したことは思い出せても、その時の情況や方法など、細かい事が思い出せない。  何より、あれほど追い求めていた筈の組織の情報が、何一つ記憶されていないのだ。  相手は、父親を殺した憎い仇である筈なのに。 (なんだ…この違和感は…?)  考えれば考える程、解らなくなる。  だが、シャドウマスクに迷う時間は残されていなかった。  すぐ後ろから靴音が響く。  新たな敵が現れたのだ。
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