2、コガラスマルVSシャドウマスクVSRAIHA

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「…次は、お前か」  その男は、戸惑いを写した瞳でシャドウマスクを見据えていた。  手には鉄製の鞄。  白い胴着のような服装に身を包んでいるが、その上からでも鋼のような筋肉が浮かび上がっている。  それでいて身体に一切の無駄はなく、一分の隙もない立ち振舞いが男が積んできたであろう鍛練を感じさせた。 「もう戦いは始まっているのか…」  男はコガラスマルの亡骸を見ながら言った。  瞳が悲しみを帯びている。  性根は情深く、優しいのだろう。 「…そうだ」 「教えてくれ。何故俺達は戦わなければならないんだ?」 「知らん。少なくとも、俺は俺の為に戦っている。お前達に興味もなければ、恨みもない」  シャドウマスクが構える。  同時に、お互いのデータがリングを介して提示された。 『RAIHA』  100年前。  ある男が古の魔神達の封印を解き、世界に混乱をもたらしてしまった。  その子孫、雷覇尊は一族の罪を償う為に魔神達を追い続ける。  彼が纏うのは、対魔神用に祖先が創り出した機動鎧『武神鎧ヤマト』。  そして、その身に刻むのは先祖伝来の対魔神格闘術『神武式封印術』。  二つの強大な力を手に、尊は魔神と戦う。  一族の罪を償い、弱き人々を護る為に。  だが、そんな正しき力と心の持ち主である尊はただ沈黙していた。 「…どうした、鎧とやらは着けないのか?」 「俺は…戦いたくない。ヤマトは、俺の拳は、弱き人々を護る為の物だ」 「ならばどうする?そのまま俺に倒されるか?」 「そうするつもりだった…。この拳で他者の命を奪うくらいなら俺は死を選ぶ。だが…」  尊は苦悶の表情で握った拳を見詰めた。 「出来ない…!心が動かない…!俺は怖いんだ…自分が消えるのが…!」  尊が慟哭する。  その瞳には、戸惑いと底知れない恐怖が渦巻いている。  その恐怖に、シャドウマスクは覚えがあった。 「…お前もか」  アナウンスを聞いた時、シャドウマスクは恐怖を覚えた。  戦いへの恐怖ではない。  もっと根元的な、自己の存在に纏わる恐怖だ。  アナウンスを鵜呑みにするわけではないが、自分の抱いた感情は否定出来ない。  戦わなければ消える。負けても消える。  とても信じられないが、その恐怖がシャドウマスクを突き動かしているのも事実だった。
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