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「確かに、この戦いは俺達が本来するべき戦いではない。何者かの作為すら感じられる」
「だったら…!」
「戦いをやめて、協力出来ると思うか?手を組んだとして、何と戦う?どう戦う?戦う以外に恐怖を払拭する方法はない」
どんな意図が隠されていようとも、シャドウマスクは戦いを放棄しない。
そうしなければ、果たせない目的がある。
自分の戦いは宿命。
記憶は無くとも、その道を選んだと言う意志は消えない。
だから、戦う。
生き残らなければ、本当の戦いは始まらないのだから。
「う…うあああああああ!!」
尊は鞄へ拳を突き立て、飛び上がった。
鞄から飛び出た金色の鎧が、腕を、足を、体幹を覆っていく。
最後に、鬼にも似た意匠の兜を被り、尊は叫んだ。
「鎧装完了!!武神鎧ヤマト!!」
名乗るのと同時に、シャドウマスクは尊へ迫った。
手に闇を纏わせ、爪のような形へ変化させ、降り下ろす。
しかし、尊は掌で受け流し、返す刀でシャドウマスクへ拳を叩き込んだ。
「…ぐっ!?」
シャドウマスクが仰け反るのと同時に、素早く背後へ回った尊の蹴りが打ち込まれた。
恐ろしいまでに鋭く、そして重い。それに、鎧を着ているとは思えないスピードだった。
僅か二発で、シャドウマスクは叩き伏せられ、大地を舐めさせられた。
シャドウマスクは絶句した。
ここまで戦力差があるとは想像できなかった。
だが考えてみれば、相手は対魔神用の機動鎧である。
ヤマトが想定する敵は闇の存在。
魔神とやらがどのような存在かは知る術もないが、闇に属する邪悪な者達であることは確かだろう。即ち、シャドウマスクも魔神達と同属ということにもなる。
対魔神用の機動鎧であるヤマトと、闇の力を操るシャドウマスクとの相性は最悪だった。
「…やってくれるな。戦うのは嫌じゃなかったのか?」
「嫌さ。だが、それ以上に俺は怖い。俺は…消えたくないんだ!」
尊の目は完全に狂気を宿していた。
さっきまであった悲しみも、備えていたであろう優しさも消え去っている。
行き過ぎた恐怖が、彼を鬼へと変えてしまったのだ。
「それはこっちだって同じだ!」
全身から闇を噴き出し、シャドウマスクが駆ける。
対する尊も、左腕を引き、右拳を突き立てて構えた。
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