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『神武式封印術・破魔の構え』。
魔神や闇の存在に対し、絶大な威力を誇る奥義『神雷』の初動でもある。
シャドウマスクにとって、最悪手とも言える奥義だ。
しかし、シャドウマスクは怯まなかった。
マスクから闇を吹き出し、全身に纏う。
文字通り最後の攻撃だ。これを破られればシャドウマスクに勝機はない。
だが、仮に勝利したとしても命は無いだろう。
シャドウマスクの力は竜生の命を代償としている。使えば使う程、その力が強ければ強い程、彼の命は蝕まれ搾り取られていく。
それを覚悟しながら、シャドウマスクは駆け出した。
漆黒の弾丸と化して、尊へ迫る。
二人が接近した、僅か一瞬。
尊の拳が、シャドウマスクを貫いた。
「神雷!!」
突き破られた腹から、出血のように闇が溢れ出る。
闇はまるで意思を持つかのように、尊目掛けて襲い掛かった。
捕らえ処の無い闇の霧となって、鎧の隙間から内部へ侵入していく。
「き…貴様、何をするつもりだ!?」
「一人で消えるのは心細くてな。地獄の道連れと洒落こもうじゃないか」
シャドウマスクの身体が、急速に薄くなっていく。
自分の身体を闇へ還元し、鎧に守られた尊を侵食しているのだ。
勿論、一度還元してしまえば元には戻れない。
相討ちを覚悟した捨て身の策だった。
「や…やめろ!?お前も消えるんだぞ!?」
「いいさ…俺は闇だ。またいずれ戻ってくる。暗闇の淵からな」
シャドウマスクが消えていくにつれ、尊の意識は朦朧としていった。
腕が、足が、力を失い、やがて動かなくなる。
金色だったヤマトも黒く染まり、内部の尊もまた黒く染まっていく。
逃げ場の無い鎧の中で、尊は恐怖のあまり叫んだ。
「い、嫌だ…!嫌だああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「…一緒に行こう」
シャドウマスクが消え去るのと同時に、武神鎧ヤマトは完全に沈黙した。
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