第1話 ドン子なんて呼ばないで!

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第1話 ドン子なんて呼ばないで!

『激安!激安!今日も安いよっ!ニコニコ笑顔っ!主婦の味方ー♪マルトクスーパー♪』 スーパーで流れる音楽にすら、バカにされているような気がしてならない。 本日特売品のジャガイモを握りしめて、悲しみに暮れていた。 大学の卒業式も終わり、春休みに突入したけど、私、呑海(どんみ)日奈子(ひなこ)は就職先が決まっていない。 何故なら、就活で受けた会社を全落ちしたから……。 泣きたいというか、泣いた。 そんなに私は社会に不必要な人間ですかっ!? 「ちょっとあなた、この賞味期限見てくれないかしら?」 ヒマを持て余して見えるのか、見知らぬおばあさんにまで、声をかけられる始末よ。 「いいですよ」 ああ、けれど今は人に頼られるのもいつもより嬉しい。 自慢じゃないけど、よくお年寄りには話しかけられる。 もしかしたら、生まれる年代を間違えたのかもしれない。 うん、きっとそう。 一人うなずき、買い物かごにジャガイモを入れた。 「ジャガイモを育てようか……」 そうだ、農業をしよう。 それなら、私にも生きる道が――― 「鈍臭いドン子に農業ができるわけないでしょ。バカなの?」 「杏美(あずみ)ちゃんっ」 「じゃがいも一つカゴに入れるのに何分時間使ってるのよ」
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