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あれから一週間、ちょこちょこ香代子さんが来てくれた。
相変わらず香代子さんの息子さんとやらは、前の部活が忙しいという理由で会えなかったけれど、男嫌いな私にとっては良かった。
3つ年下とはいえ、父以外の男は大嫌いだった反面内心「残念」と思っていた。
「浮かない顔して、どうしたの?」と小学校の頃からの悪友‥もとい大親友の高倉弓美が、ニッコリ微笑んだ。
弓美は、可愛くて男子たちからモテモテだった。
年上彼氏の片上正治さんがいて、羨ましかった。
「んー?お父さんがさ、再婚したいって言ってて…」と私がポツリ呟くと「いいじゃない。大人同士なんだしさ、クヨクヨしてたってしょうがないじゃん♪」と言うと、弓美は私の肩をバシバシと叩いた。
真澄はすっかり香代子さんと仲良くなったみたいで、たまに香代子さんが来ると凄い嬉しそうな顔をしている。
「何か、嫌なトコとかあるの?その香代子さんとやらは??」と弓美に言われ、考えてみた。
が看護婦という仕事をしながら、私が大嫌いな家事全般をしてくれるしバリバリのキャリアウーマンだしいつも笑顔だしと、非の打ち所が全く無い人だった。
「ない…完璧過ぎるのよ…」と言いながら、私は大きくため息を吐いた。
この日は、何事もなく平穏無事に一日が過ぎていった。
弓美とファーストフード店に立ち寄り、いつものようにおしゃべりをするのがとても楽しかった。
「ここのシェイク、いつも飲みにくいわよね~」と言いながら、弓美がバナナ味のシェイクを飲んでいると「可愛いねぇ♡俺らも相席させて♪」と言う声がしたが、弓美とシカトをしていると「おい、聞いてンのかよ?!このブス女!」と私たちに言い放った瞬間、その言ってきた男性が思いきり吹っ飛ばされた。
「野郎っっ!!」と声がし、男性のツレらしき男性がパンチをしようとすると、サッと避けてから「鏡、見てみ?」とポケットから手鏡を出して見せたあと「テメエらの顔の方が、凄く不細工だよ?」と言うと、思いきり顔に目掛けてパンチをして撃退をしてくれた。
私は怖くて俯いていたが、弓美は黄色い声を出しながらキャーキャー言っていて、男性は無言で立ち去った。
立ち去ったかと思い、恐る恐る顔を見上げると背はスラッと高くて黒髪のリーゼントヘアで、目が合った瞬間ウィンクをされ、有名ブランドのボストンバッグを手にして去っていった。
「ねぇー!ねぇー!今の人、麻衣美の知り合い??何処の高校?!」と弓美がいつになく興奮して前のめりになってきたが、私は知らなかったし、何故ウィンクをされたのかも全くわからなかったから「いや、知らん」と言い、ドキドキしながらフライドポテトを頬張った。
弓美はアルバイトがあるということで、この日は帰った。
私もアルバイトをして、ポケットベルが欲しいなぁと思い、携帯電話のお店のディスプレイにあるポケットベルを見つめながら、大きな溜め息を吐いていると、あの男性が歩いてきたのが見えたから、カタログを手にし、思わず足早に携帯電話のお店を出ていった。
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