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あれから二週間後、香代子さんたちが引っ越してきた。
だいぶ私も香代子さんとは普通に話せるようになっていたものの、お母さんと呼ぶのが何となくまだ恥ずかしかった。
真澄はすぐにママと呼んでいて、何となく壁を感じてしまっていた。
翔兵くんは相変わらず掴みどころがなくて、朝は前に通っていた中学校まで通っていたため私より早くに起きて学校へと行っていて、会話はほとんどなかったが、真澄は気になっているのか話しかけていたものの、無反応だった。
この日、私は近場のファーストフード店がアルバイトを募集していたため応募をすることにした。
リビングで履歴書を書いていると、帰宅部の真澄が帰ってきた。
「ただいま~!お姉、帰ってきてたンだ?」と言いながら、冷蔵庫から麦茶の入ったピッチャーを取り出すとコップに注ぎ入れて、一気に飲んだ。
翔兵くんは、真澄のことを真澄ちゃんと呼んでいて、私のことは麻衣美さんと呼んでいた。
最近、香代子さんの仕事が忙しいみたいで翔兵くんが料理を作ってくれていた。
正直香代子さんが作る料理よりも美味しくてついつい食べ過ぎてしまい、2kg太ってしまった。
この日の夜、香代子さんは夜勤ということで、父・真澄・翔兵くんの四人で夕食を食べていた。
すると家の電話が鳴り、近くにいた翔兵くんが電話に出た。
「もしもし?んっ??うんうん…えっ?わかった。ちょっと待って?幸廣さんに変わるわ」と言い、子機を父に渡した。
父が「もっしもーし♡どうしたのかな?」といつになく上機嫌だった父の顔が段々と暗くなっていった。
「うん…わかった…」と言い電話を切って、大きく溜め息を吐いた。
真澄が「パパ?どしたの??」と心配そうな顔をしていたが何となく上の空状態で、翔兵くんは気まずそうな顔をしていた。
「お父さん、翔兵くん。何があったの?」と私が聞くと「オフクロ、来月から一年間アフリカに行くことになったみたい」と言い、翔兵くんが困惑した顔をした。
「……寝る」と言うと、父親はフラフラしながらリビングを出ていった。
翔兵くんは、香代子さんが長年夢だった国境なき医師団で活躍したかったみたいだと話してくれた。
「だから、オフクロは再婚したくないって言ってたンだけれど、幸廣さんが猛アプローチをしてきたから根負けしたってワケ」と言い、翔兵くんは苦笑した。
「そうだったンだ…ゴメンなさい」と言い、私が謝罪をすると「そんな麻衣美さんが謝ることじゃないでしょ?それにオフクロ、何だかんだで幸廣さんのこと好きみたいだしね」と言うと、翔兵くんは食器を手にして片付けた。
何となく、その瞳は寂しそうだった。
次の日、学校へ行くと「おはよ♪」と弓美がニコニコ微笑みながら私の肩をポンッと叩いてきた。
「おはよう♪」と言いながら、他愛もない話をしながら教室へと入った。
弓美はニコニコ微笑みながら「どぉ?新しいお母さんは??」と聞いてきたから、昨日の話をすると「えーっ?!じゃあ、新婚早々おじさんと離れ離れってこと!?それまた大変じゃない!料理とかはどうするの??」と言い、心配をしてくれたと思いきや「ってことは…おじさんがいなくなれば、連れ子くんと真澄ちゃんと三人っきりじゃない♡」と言い、ニッシッシッシ‥と意味ありな含み笑いをしてきた。
「なっ何もないよ!!」と言うと「ふぅ~ん…まぁ聖人のせいで、男嫌いになっちゃったンだもんね?」と言い、弓美は親指で聖人を指差した。
この日も平穏無事に学校を終え、面接があるため私と弓美は別れた。
ファーストフード店には10分前に到着し、ちょっと早いけれどお店のトイレへと入り、髪の毛を母が買ってくれた櫛で梳かしてから髪の毛をポニーテールにして、メガネを外してから頬を二回叩いて気合いを入れてからメガネを掛け、お気に入りの色付きリップクリームを塗ってから笑顔の練習をしトイレを出ていった。
店長を呼んでもらい事務所で面接をしたのたけれど、緊張しすぎてあまり覚えていないまま帰った。
家に到着すると、真澄がムスッとしながら玄関に座り込んでいて、てっきり鍵を忘れたのかと思いながら、どうしたのかと尋ねると「お姉!!コレ、見てよ!」と言い、半分に切られた紙を渡してきた。
私は首を傾げながら、その紙を手にすると『ワハハハハ♡香代ちゃんと新婚旅行がてら、香代ちゃんの仕事に同行することにしたから4649~♡何かあったら、妹の好美に連絡するんだぞ♡』と香代子さんと自身のトカゲの似顔絵付きで書いてあり、思わず「はぁああ?!何を考えてるのよ!?」と大声で言うと「ねっ!?可愛い娘たちを置いて行くだなんて、信じらんない!!」と言いながら、真澄も怒っていた。
この日から、私と真澄と翔兵くんの三人の生活が始まった。
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