【2】ファーストキスは苺の味?

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最初、私なりに早く起きてお弁当を作ってみたけれど、真澄が「ぶぇー、不味い」と言っていたため、見かねた翔兵くんが作るようになった。 朝、いつものように起きると翔兵くんが鼻歌を歌いながら朝食とお弁当を作っていたから「おはよう。いつもゴメンね?」と謝ると「おはよ。別に?オフクロが忙しいときとか作ってたし、気にしないで大丈夫だよ」と言いながら、お味噌汁の味見をしていた。 お出汁のイイニオイがリビング中に広がっていて「翔兵くんの料理が美味しくて、つい食べ過ぎちゃうから太っちゃった」と笑いながら言うと「ふーん?」と言いながら、私の顔をマジマジと見つめてきた。 「なっ何?」と言い、私が後ずさりをすると「会ったときに思ってたけれど、アンタ、メガネ外した方がいいよ」と言いながら、翔兵くんがメガネを外そうとしてきたから咄嗟にビンタをしてしまった。 「あっ…!ごっ…ゴメンなさい」と言ったあと謝罪をしようとしたが、私は走って部屋へと入っていき、胸が苦しくなって泣いてしまっていると「ゴメン」と翔兵くんがドアの向こうで、声がした。 私は涙を拭い、メガネを掛けてからドアを開けると翔兵くんが申し訳なさそうな顔をして、私の顔をチラッと見た。 「べっ別に、翔兵くんが悪いワケじゃないの。私の方こそ、ビンタしちゃってゴメンなさい」と言い頭を下げると、「よしよし。きっと、何か嫌なことでもあったンだろうね」と言いながら、優しく頭を撫でてきた。 またしても、ドキッとしていると「はい。弁当」と言い、お弁当箱が入ったランチトートバッグを渡すと、真澄を起こしに行った。 真澄が「んにゃあ…翔ちゃん、お姉。おはよ…」と言いながら、大きく背伸びをしてアクビをしたあと、洗面台で歯と顔を洗っていると「今日から三日間、俺と麻衣美さんだけだね♪」と耳打ちをされ、ハッと気付いた。 そうだったのだ。 この日から三日間、真澄は林間学校だということを私としたことが、すっかり忘れていたのだ。 ……不覚っ!! という私の気持ちを知っているであろう真澄は、楽しみにしていたみたいで学校へと向かっていった。 私も学校へと向かおうとすると「さてと、俺も髪の毛をセットしてくか」と言い、翔兵くんは制服に着替え、洗面台で髪の毛をリーゼントヘアにセットしていた。 そのときに、あのとき私と弓美を助けてくれたときの男性が翔兵くんだとようやく気付き、思わず「あっ!!あのとき、助けてくれたよね?!」と言うと「やっと気付いてくれた?」と言い、翔兵くんはあっかんべーをしてピースサインをし、ニッコリ微笑むと「気付くの遅すぎ」と言いながら、私の顎をクイッと上へと上げるとキスをした。 「んんっ?!」と言いながら、私が驚いた顔をしていると更に舌を絡めてきた。 必死に抵抗をしたが、男性の力には勝てなくて押し倒され、苺味の飴を舐めていたのかその味にドキドキしていると「苺柄のパンツもだけれど、麻衣美さんも凄く可愛い♡」と言い、翔兵くんは耳を軽く噛んでから舌で耳を舐めてきた。 「んあっ…♡翔兵くん…?」と言いながら、顔を真っ赤にしていると「続きは、夜にしようね?」と言うと、翔兵くんはウィンクをして出ていった。 ……って、何だか懐かしいイチゴ味で、優しくリードをしてくれていたからか気持ち悪くはなく、あのときの子にキスをされたときにも同じ味だったなぁと思いながら、私も学校へと向かっていった。 「おはよう♪どうだい?奇妙な生活は??」と言い、ニヤニヤと笑いながら弓美が聞いてきた。 「おはよー…ん~?こっこれといって、何にもないよ?!叔母さんも来てくれてるしね!」と慌てて言いながら、咄嗟に嘘を吐いて否定をしたからか更に追及をしてきた。 弓美の父親はゴシップ雑誌・週刊Pasha!の編集長の高倉祥太郎(たかくらしょうたろう)で、母親も高倉志穂美(たかくらしほみ)という芸能リポーターという、ゴシップが大好き一家である。 父もしつこくされてきたこともあり、両親同士は犬猿の仲だった。 「本当に??だってさ、15歳といえば性に盛りがつくお年頃じゃない?何にもないというのが、おかしいわよ~怪しいなぁ…?」と言うと、さらに追及をしてきた。 まさか子ども三人で暮らしているだなんて、言えない。ましてや今日の朝の出来事なんか、絶対に言えやしない。 ちなみに真澄とも仲が悪くて、目が合えば喧嘩ばかりしている。 何とか弓美の質問責めから逃げ切り、他愛もないおしゃべりをしていた。 この日も、ごく普通に半日が過ぎていった。 お昼休みとなり、ランチトートバッグからお弁当箱を取り出してお弁当を食べながら、同じく中学校の頃からの親友・今井多恵子(いまいたえこ)と三人でおしゃべりをしていた。 多恵子はおっとりとしていて、とても優しい女の子。 弓美のようにガツガツはしていないから、相談もしやすくてアドバイスもきちんとしてくれるし、弓美には言えない秘密の話をしても絶対に弓美や周りの人たちには言わなかったから、正直弓美よりも好きだった。 ただ聖人に中学生の頃から片思いをしていて、私は猛反対をしていたが一途に好きで、聖人が習いに行ったり部活の剣道の試合があると、必ず応援に行くほどである。 芸能人は別として、一般の男のドコがいいのか理解できない。 ましてや聖人(アイツ)のせいで、私は一生独身でいいとさえ思ってるぐらい大嫌いだった。
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