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・・・侑久―――”彼”、なんだな・・・
透き通るような白い肌に綺麗な二重のぱっちりとした目、頬はほんのり赤く染まり、しっかり口角の上がった形のいい唇は思わず触れたくなる程柔らかそうで。耳の下あたりまで伸ばした栗色の髪は毛足を遊ばせた様にふんわりとセットされ、華奢な体に真っ白なコットンシャツと黒のスラックス、踝まであるソムリエエプロンを身に着けた姿は、小料理屋の主というよりも、宛らカフェ店員といった風だった。
男は周りの常連客と談笑しながらも、いつも目の端では主の姿を追い、話しかけるタイミングを探していた。
腹にたまるつまみを2,3品注文し、時間をかけながらゆっくりと味わう。
・・・少しでも長くこの場に留まるために。
「へば、また来るよ、霞ちゃん。ごっつぉさん」
「明日の昼頃、魚っこ届けに来るがらな~」
「なんぼ遅くなってもいいがら、おらほさ風呂入りにけぇ」
常連たちが口々にそう言って帰って行くと、あれだけ賑やかだった店内が寒々しいほど静まり返る。
いつの間にか店内は主と男だけになっていた。
「賑やかでびっくりされたでしょう?」
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