彼はうそつき

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彼はうそつき

 彼はうそつきだ。どう見ても、体調が悪そうなのに私が心配して大丈夫と声を掛けても、大丈夫とだけ答える。いつもそう。  どうして、本当のことを言ってくれないんだろう。私に隠すほどのことなのかな。それとも、信用されてないのかな。不安はずっと心の中に留まった。  ある日、彼がぼーとしていた。また体調が悪いのかなと思い、声を掛けた。彼は大丈夫、問題ないとまで口にした。  なんで、また嘘をつくの? 私は彼の言葉になんだかイライラしてしまって『うそつき』とわざと声に出してその場から逃げ出した。その後、彼は倒れたらしい。彼について居れば、すぐに気づけたのに私はその場を離れてしまっていた。  彼が病院に搬送されたと親に聞かされた。私は咄嗟に病院に向かった。病院に着くと、彼は眠るように横になっていた。お医者さんに聞くところによると、意識を失っていたらしい。  相当辛かったのかな。その姿を想像すると、自然と涙が零れた。  彼は十分程で目を覚ました。泣いていた私の頭を撫でて慰めてくれた。  嬉しかったけど、そういうことをしてほしいんじゃないんだ。嘘をつかないで、抱えてるなにかを打ち明けてほしい。  でも、そのなにかは予想出来た。多分、彼は病気なんだと思う。それもとても重い病気なんじゃないかな。なぜなら、軽い病気なら搬送されるほどじゃないと思うんだ。  もし病気じゃないとしても、信じることが出来ない。何度大丈夫と聞いても、彼の様子が明らかにおかしいから。  私はどうすれば、真実を聞くことが出来るのかな。  結局、彼からなにも聞けずに半年が過ぎた。それは、突然起こった。彼はまた意識を失って搬送された。今度は意識が戻ることが困難らしい。  数日、五日、一週間。彼は目覚めることはなかった。後で彼の両親から聞かされた。癌だった、と。  彼は大丈夫だといつも言っていた。大うそつきだ。  私は声を出して泣いた。
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