*空人side*

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「久しぶり」  春香に指定されたファミレスは、以前二人で来たことのある場所だった。  もう二度会わないと告げたはずの春香からの呼び出しは、『二宮のことで大事な話がある』ということだった。 「ごめん、待たせた?」 「ううん、暇だったから先に着いてただけよ。何か食べる?」 「いや、飲み物だけ」  二宮のことって何だろう?  春香に連絡をもらってから頭の中はそればかりだった。 「この間ね、二宮さんのとこにお見舞いに行ってきたの」  意外だった。  二宮を助けたのが春香だったことも。  だって春香は二宮のことが嫌いだったはずなのに。 「元気、そうだった?」  メッセージでのやり取りしかしてなかったから、二宮の容態が知りたい。  入院初日に少しだけ会ったきりだったから。 「元気そう、ではなかったな。やつれてた、ずっと高熱が続いてたみたいで体力消耗しちゃってる感じよ」 「そうなんだ」 「わっかりやすい」 「え?」 「空人ってば二宮さんの話になると前々からそうなるよね、ソワソワしちゃってる」  同じこと前にも言われた。  確か春香がお祭りで二宮を叩いた日のことだ。  その時の春香は泣きながら怒っていたというのに、今日は呆れたように笑っている。 「心配?」 「そりゃ」 「友達として?」  驚いて春香を見たら、クスクス笑いだして。 「空人が二宮さんのこと好きだって言ってくれてたら、私だってとっとと諦めてあげてたわよ」  なんで言わないのよ、と顔をしかめてベエッと舌を出す春香。  いつも美人で優しくて、だからこんな顔もするんだって今日初めて知った気がする。
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