プロローグ

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 時々、夢を見る。  あれは多分、幼い頃に私が起こした大事件、いや大冒険の夢だ。    紫色だった空は、君の元に戻る頃にはすっかりと青色に変わる。  陽の光で眩しいくらいに輝いた銀色の世界を、白い息を吐きながら走る、走る、走る。  滑り止めなんてついていない靴だから、何度も雪の中で転んでしまった。  それでも走らないと、皆が心配しちゃうから。  立ち上がり顔を上げて、また走り出す。  寒さのせいなのか、いつものように痛みだす、チクンチクン。  大切なものを握りしめた手で痛む場所をおさえ、それでも走るのは止められない。  だって君が待っているから。 『もう大丈夫だよ』  息を切らしながらたどり着いた先で、君は私の手をギュッと握りしめた。  泣きながら笑って。 『君みたいに強くなれるかな?』 『絶対になれるよ。あきらめなきゃ、なれるから』  不安そうな瞳が揺れていて。  大丈夫、きっと大丈夫と、大きく頷いてみせた。   『目が覚めたら会いにきてくれる?』 『明日の朝、一番にお部屋に行くよ! 約束だよ』  そんな約束は、ついさっきの出来事よりも容易いことだ。  一人きりの大冒険、本当はちょっとだけ怖かったんだもん。  笑顔で交わした指切りげんまん。  大切な約束。  だったのに!  私のうっかりのせいで果たせなくなった。  本当にごめんなさい。  私のことを強いと言ってくれた君とは、もう会えなくなってしまったけれど。  きっと強くなっていますように。  あの夢は全て、今の私を創る原点だ。  あきらめない、あきらめたくない。  だから私は初恋までもがあきらめが悪い。  もがいて泣いて向き合って、 ――あきらめきれない恋をしたのだ。
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