143人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
恋をしました
「花菜、どう? いる?」
今年は暖かかったせいか、入学式よりも前に桜の花は散ってしまった。
新しい始まりは新緑の匂いと、五月の空みたいな澄んだスカイブルー。
丘の上にある市立春日丘高校1年D組、本日より私のクラス。
教室の入り口から顔だけを覗かせて、キョロキョロとこれから三年間お世話になるクラスメートたちを見回した。
「う~ん……、いない気がする」
――あの日、優しい笑顔で私を助けてくれた人。
探し人が見つからないことに、肩を落とす。
もしかしたら、同じクラスだったりして。
そうしたら、あの出会いは『運命』なんじゃないかって。
わかってる、『運命』なんて、そんなお手軽で都合の良いものではないってこと。
まして彼がこの高校に受かっているかどうかすら、わかってはいない。
名前も知らない、一度しか会ったことのない、あの人――。
1学年5クラスもある中で、幼馴染の琉伽と同じクラスになったことだけでも奇跡だもの。
ん? もしかしたら、そこでもう今年の運は使い果たしたのかもしれないけれどね。
最初のコメントを投稿しよう!