01:横田君

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僕の言葉に横田君の泣き顔が一変して、満面の笑みになる。 素直に言葉を受け止める感情豊かな子だな、可愛い。素敵な個性だけど、お仕事には差し支えそうだ。 「正直、久保さんに憧れているので、そう言われるのは嬉しいです!ただ、そんな面が仕事に突っ掛かっていて・・。」 「あ、それも僕も心の中で思ってたよ。凄いね、自己分析がキチンと出来て。今回もそれが仇になっちゃった?」 「・・はい。一目見た時点で、もう俺はたどたどしくなっちゃって・・。口と表情がチグハグだったと思います。で、お客様が積極的になった瞬間、俺、突飛ばしちゃったんです・・。」 「あー、なるほど。」 「正直、俺の姉ちゃんにもそうやった事があるんです。姉ちゃんは、重度の自閉症で、その、悪気は無かったんだろうけど、下半身を掴まれて、反射的に・・。で、謝れない中で、偶然に事故死しちゃったんです。普段出歩かない場所で、足を滑らせて・・。」 「そりゃ、後味悪いね。」 「いや、それ以上に、姉が死んだ後の家の方が居心地悪くて・・。今まで姉が中心の家だったのに、両親が急に俺をチヤホヤしだして。俺、姉の面倒を見るために生まれてきたと思ってたんで・・。」 「で、たどり着いたのがこの店なんだね。」 「はい。・・俺、本当に何も出来なくて。この仕事なら出来るのかなと思ってたけど・・。」 うなだれ、アンニュイな表情を浮かばせる横田君。 そんなことは無いんだけどなぁ。だって、僕は横田君に敵えない事があるのだから。 「あのさ、想像しにくいだろうけど、和泉さん結構褒めてたんだよ。」 「えっ・・!」 「横田君、勃ちがいいんだよね?横田はなくても逝けるのにって嫌味を言われながら薬を渡されてるよ。」 「は、はい・・。面食いで、お客様の顔が整っていたら・・。この前なんて、中性的とはいえ、男相手にも勃起出来ました・・。自分でもビックリしました。」 「へー、そりゃすごい!」 本当に凄い才能だ。 薬無しで勃たせるなんて、お客様も嬉しいだろうなぁ。 そして、横田君が勃ったら、身長のように縦に長いか名前のように横に長いか少し気になってしまった。 あ、そうだ。 こわいひとから、横田君の研修を軽く任されているんだっけ。
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