07:雪華さん

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雪華さんからジャケットとヘルメットを借り、彼女はライダースーツを着用しバイクに案内された。丸みのある黒いバイクだ。 「雪華さん、海見ながら家へ帰りたい!」 「えぇっ・・凄く遠回り・・!」 「駄目ですか?」 「むしろ嬉しいけど・・。いいの?私とこんな長く居て。」 「長く居たいから言ってるんだよ?それに、雪華さんの家は海の匂いがしたから見たくなっちゃった。」 「そう言えば、オーシャンブルーのフレグランスをしてたんだっけ・・。ふふっ!しといて良かった。」 バイクに乗り込み走り出すと、全身風がぶつかってくるような感覚がする。凄いスピードに思えるが、雪華さんの事だから基準通りの速さなのだろう。 あっという間に海岸線になり、揺らめく海にビルの光が反射して輝いている。 僕は水や光を見るのが好きだ。ずっと見てられる。 だがこれは、僕のハンデの特性らしい。 綺麗だよね?だいたいの人は好きだよね? でもきっと、僕と他の人と捉え方が違うのだろう。 他の人は、雑念がある中で様々な背景の中の1つとして好むのだろう。けど僕は、揺らめくもの光るものを一点に執着し周りが全く見えなくなってしまう。 「久保君、危ない!しっかり掴まって!」 さっそく、そんな海に執着してしまっている僕に指摘が入った。 彼女の言われるまま、思いっきり抱き付いてみる。すると、バイクは左右に大きく揺れ動揺している様が見えた。 「アハハッ!危ない!」 「うぅっ、ごめんなさい・・。想像以上に抱き付いてくれたから・・。」 「僕の事、大好きだね?」 「えぇ。海もビルも綺麗だし、最高の気分!」 凄いなぁ。海だけではなくビルも楽しみつつ、話しながらバイクの運転も出来るんだ。 ことりちゃんもだけど、雪華さんはXジェンダーを抱えているが定型発達・・多数派の人間だよね。色々出来て凄い。 僕がハンデ持ちだと知ったら雪華さんはどんな顔をするんだろう。 住んでいるアパートにつくと、僕は真っ先に彼女の分のヘルメットを外し唇を重ねた。
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