6人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の彼女になって欲しい。
ことりちゃんにいつも、そう言いたくて仕方がなかった。けど、僕には障害と多額の借金がある。それが足を引きずって、ずっと言えないでいた。
そして、今も言えない。
抱きつきながら、こう告白した。
「特別な人。僕が今を生きるために必要な、本当に大切な人。」
これが精一杯の僕の告白。
伝わったかな。
恐る恐る顔を見ると、笑顔のことりちゃんがいて一安心した。
僕は彼女の病院服の紐をほどき胸を露にさせ、頬擦りしたり指で楽しんだ。
そんなこれからって時なのに、タイマーが鳴って僕らを邪魔してくる。
「・・時間配分失敗した。」
『絶望的な顔も可愛い(笑)』
「仕事、行きたくない・・。あぁぁぁっ・・イヤだぁ・・。」
『今日の抵抗は一段と凄いなぁ(笑)』
「・・・・。」
『ほら、胸を堪能したんだし。』
「うぅっ、ことりちゃんは僕がいなくなって寂しくないの?」
ことりちゃんは、苦しそうな顔をする。
これからシンドイお客様に仕事へ行く僕なんかより、ずっと辛そうだ。
震える手で、ホワイトボードに思いを書いてくれる。
『行かせたくない。でも、私は何もできない。何もできないでごめんなさい。』
そんな彼女の苦痛の笑みを見て、更に重い足取りで前に進んだ。
今回のお客様は、よく僕が使っていた道を通って向かう。
向かう途中、小学校の前を通った。その体育館の裏に花が咲いていた。日影の中太陽の光を求め明るい方を目指して首を伸ばしている。
それを見て数少ない僕の記憶から、唯一僕に構ってくれた先生の言葉が甦った。
「久保君、このお花はお日様がないと育たないと言われてる。でも、影の中でもきっちり光を求め、育っているでしょ?どんな花も太陽の光さえあれば、それを目がけ育っていけるのよ。」
僕は道端に咲く様々な花を見ながら、お客様の住む場所に向かう。
ついたのは、少し古めのアパート。お客様の住む部屋の扉前には、ダンボールが置いてある。
お客様の指示。中の物を装着して部屋を訪ねて欲しいとのこと。
最初のコメントを投稿しよう!