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「その子が愛おしすぎて、贔屓したくて仕方がなかった。異常な家庭環境から救いたくて誘拐したかった。理性で堪えてたと同時に自分の中の異常な性癖に気付いた。恋愛にドライだと思ったら、まさか対象が少年・・もっと早く・・教師になる前に気付きたかった・・。」
いつの間にか、僕はセンセイの頭を撫でていた。本当に、無意識に。
「ただ幸い、対象はその男の子だけで、卒業して疎遠になればなるほど感情が薄まり、恋愛にはドライで生徒を生徒として愛す先生に戻れた。なのに、なのに・・。」
センセイは震えている。まるで、犯罪を犯してしまったように青ざめていた。
「また、久保君のように惹かれる独特な子の担任になってしまった。オマケに、久保君と違って発達が良い、恋愛に積極的なタイプ。私の好意に気付いて、誘惑してくる・・これ以上来ると私・・私は・・。」
震える体を寄せ、僕は強く抱き締める。
そういえば昔、泣いたセンセイに抱き締められた事が数回あった気がする。大きく見えた背中が、今は包み込めてしまう。
「嫌だなぁ、その子に感情がいってたら。寂しい。」
「えっ?」
「僕、初めて好きになった女性はセンセイでした。独占したくて仕方なかった。今の話しが聞けて本当に嬉しい。ねぇ、僕だけを見てよ。・・押切先生。」
真正面に向き合い微笑むと、センセイは嬉しそうに笑い返してくれる。
「・・久保君・・。」
「センセイ!」
「一瞬夢を見させてくれてありがとう・・優しい嘘をつける大人になったね。」
「バレた。」
「ぷっ・・アハハッ!久保君は小学生の時、恋愛のレの字もなかったからね。」
「今では立派なヤリチンだけどね。」
「違う・・久保君は違うの・・。ご両親の借金を背負って・・。あぁっ、やっぱりあの時誘拐しとけば・・。」
「それはそれで、歪んで育っちゃいそう。」
通り道で見た体育館裏の花、ハッキリと見える押切先生の顔、育つというワードが繋がり、ある1つの小学校の頃の記憶が思い浮かんだ。
卒業式の日。卒業証書を貰って役目を終わった僕は、皆が他の表彰を貰う中外に出て体育館で昼寝をしていた。
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