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そう、人から避けられる風俗という仕事を、僕は自分の存在意義だと見いだしているのだ。
「・・そんな僕という花は、きっと人間社会から見たら間引くべき種だと思う。少なくとも関わったほとんどの先生は勝手に枯れるのを待つか、他の場所に移植しようとしていた。でも押切先生は、大切に育ててくれた。僕だけではない、面倒見切れない数の沢山の花を同じ場所でどうやったら共に育つか考え行動してくれた。」
改めて僕は、センセイに抱きついた。それは敬愛としての意味で。
「僕、センセイには先生をずっとして欲しい。誰がなんと言おうとも。今誘惑してくる生徒に負けず、先生をしてて欲しい。」
センセイはボロボロと涙を溢している。僕はつられて静かに泣いた。
「久保君、ありがとう・・。私は人として正しい道を生徒達に示す覚悟が出来た・・。」
「えっ・・?」
「後、先生と久保君は1つ間違えた認識をしている事に気が付いた・・。」
「えっ・・?」
「それはね、人は花に例えられない。花に例えようとするには、人間はもっと高度で複雑な生き物よ。」
「・・・・。」
「そして久保君は、人間として1番大切なモノを誰よりも持っている。どんなにお金を積まれても手に入らない大切なモノ。だからこそアナタは、高いお金を払ってでも皆が会いたがるの。」
「僕が持つ、人間として1番大切なモノって何?」
「言葉に出来ない、してはいけない心の感覚よ。先生はね、久保君が凄く素敵な大人になって誇りに思う。」
「・・・・。」
「そして私はアナタにとって、素敵な先生になれなくてごめんなさい。」
静まり返るお風呂の中。
隣の部屋にあるタイマーの音がよく聞こえた。
センセイと別れた帰り道、凄く体が重かった。こういう時にこせよく忘れるスキルを発動したいのに、センセイとの出来事が頭から離れずぐるぐる回る。
よし、こういう時は外食だ。月に1・2回の自分のご褒美。
僕にはお気に入りの店が1つあり、そこばかり行ってしまう。
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