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赤レンガに蔦が絡まる洒落た洋食屋さん。アンティークな趣きで女性向けだが、バランスが取れた優しい味付けな上に少食の僕にはちょうどいい量のお店。
オマケに、たまに女の子が積極的に話しかけてくれて気分転換にもなる。
「いらっしゃいませ。ご注文はいつものでよろしいですか?」
「うん。」
月1回位しか来ないのに、頼むメニューを覚えてくれる店員さん。動きも人への態度もよく出来た人で僕も彼女の事は覚えている。
「今日、けっこう混んでますね。そんな中ホールを1人回しですか?大変。」
「はい、急遽休んだ店員がいて。でもやりがいがありますよ。」
そう自信満々に答える店員さん。辺りを見回して席を探すのと同時に、僕も席を見回してみる。
すると、ある知っている人物がいて僕はそこを指差した。
「僕、あの人と相席します。」
「えっ、お知り合いですか?」
「うん、お仕事でちょっと。」
「お仕事で・・!そうなんですか・・!」
急に、尊敬の眼差しを向けだす店員さん。
あ、誤解されてしまっているな。
確かにあの人とお仕事の関係があると言われたら、僕でもエリートに見えてしまうのかもしれない。
指した相手は、質のいいスーツを身にまといノートパソコンを弄る男性・・に見えるXジェンダー。
雪華さんだ。
相変わらず品やかで育ちの良さが見えてくるが、この前より目は鋭く堂々として雄々しい。
そうだ、今日は火曜日。男の日だ。
「あの人ってよく来るんですか?」
「はい、常連さんです。最近は通いづめなんです。」
「そうなんだ。すみません、勝手に席へ向かっちゃいますね。」
僕は背後から雪華さんに近付いて、思いっきり肩を掴んでみる。
「せっちゃん!」
「久保君!?」
「僕の方が、先に見つけちゃいました。」
「あ・・あぁ、そうだね。本当に、プライベートで絡んでくれるんだね・・。」
手で口を押さえ、少し目をそらし赤面する男の雪華さん。ドギマギする様子が凄く分かる。
この人、本当に僕の事が好きだなぁ。
僕もわりと、雪華さんが好きだ。
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