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全然記憶にない話し。頷きながらも他人事の話しのように聞いている。
「水を溢し服にかかっても乾くから大丈夫といい、何回も料理を運び間違えてもしょうがないで済ませ、あげくの果てにやっと来た料理を目の前で落とし駄目にしたら、拾って食べるので大丈夫と・・おおらかを通り越して、なんというか・・。」
「色々気にしないんだ。」
「・・凄いね。更に凄いのは、店員さんの励ましの言葉。こんなに沢山お客様がいるからパニックになるよね、僕は後回しでいいから一気にこなすのではなく、1つの1つの机を集中してこなしてけばミスを減らせないかな。僕はそうしてミスを減らしてる。ってさ。」
「僕、いい人だ。」
「アハハッ!本当にね!そして何より、今までその店員さんにイライラしていた人達が緩和され許せる空気になったんだ。店員さんのミスも減った。そして、今じゃ1人回しも出来るベテラン店員になった。」
話しながら見つめたのは、僕がいつも頼むメニューを覚えてくれている店員さんだった。
「私は彼女を出来ないと決めつけていた。でも君が、人を切るのではなく環境を整え根気よく待つ大切さを教えてくれた。そして、周りの空気を変えてしまう久保君の人間力にドキドキした。この店に来ると君を探し、見つけたら幸せな気持ちになった。そして、性の事で悩んだ先にPUZZLEという存在を知り、店員を見ると君がいた。」
「運命だね。」
「あぁ、運命だと思った。32年間、なかなか話せなかったXジェンダーを、君になら告白出来ると思えた。」
「だから僕が大好きなんだね。その話しをもっと早くしてくれれば、ここですぐに会えたのに。何で話してくれなかったの?気になっていたんだよ。」
「少しでも、私の事を考えて欲しくてね。」
そう艶やかに笑いながら答えてくれる。
確かに僕は雪華さんと別れた後、15分位考えていた。せっちゃんの手の内に回っていた気分になる。
そんなタイミングで、僕達の料理が運ばれてきた。
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