6人が本棚に入れています
本棚に追加
/314ページ
「よく分かりましたね。一応、動作や仕草、気を付けているんですけどね。」
「光が好き、靴ヒモの結びが不器用、キチガイ行動に対してキチガイ対応。人に興味があるのだろうけど物体を見るような目。後、動作や仕草も気遣いきれてない。特に視線。」
「凄い。気を付けないと。」
「・・併用してる・・。」
「はい。」
「よくこんな無能で生きようと思うな。私だったら恥じて自殺している。」
想定はしていたけど、思う以上に言い方キツイなぁ。苦笑いする僕に、彼女はなおムッとした顔で観察を続けている。
「もしや、定型発達の方を雇いたかったですか?だったら申し訳ないです。」
「いや、むしろ定型発達は嫌いだ。何より、美形とはいえ何でこんな障害を併用している奴が1回やるのに30万で予約待ちなのかが気になる。アンタは何故自分がその価値を生み出しているのか分かるか?」
「なんでしょうね。4年間勤めてたら勝手に値段があがりそうなりました。」
「・・これは、どんどん価格が下がるな。」
呆れた顔で見られてしまうが、僕は僕なりに彼女の事を観察している。
「本当に凄い観察眼です。何より、僕の知能に合わせて会話してくれている。凄く話しやすいです。」
「!」
「職業的に見ても、IQ高そうですよね。差が離れるほど会話が成り立たない。」
「あぁ、IQは130ある。アンタだけじゃなく、基本私が合わせてる。」
「幼少期、療育受けてきましたか?」
「あぁ。」
「理解ある親御さんですね。」
「・・ボッーとしていると思ったけど、アンタの価値が少し理解出来た。でも、30万はない。」
少し僕の事を認めてくれたらしく、強い発音のアクセントは和らいだが、アスペルガー特有の淡々とした言い方は変わらずだ。
そして、ムッとした顔も変わらず。僕は心の中でムーちゃんとあだ名をつけた。
最初のコメントを投稿しよう!