09:ムーちゃん

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「よく分かりましたね。一応、動作や仕草、気を付けているんですけどね。」 「光が好き、靴ヒモの結びが不器用、キチガイ行動に対してキチガイ対応。人に興味があるのだろうけど物体を見るような目。後、動作や仕草も気遣いきれてない。特に視線。」 「凄い。気を付けないと。」 「・・併用してる・・。」 「はい。」 「よくこんな無能で生きようと思うな。私だったら恥じて自殺している。」 想定はしていたけど、思う以上に言い方キツイなぁ。苦笑いする僕に、彼女はなおムッとした顔で観察を続けている。 「もしや、定型発達の方を雇いたかったですか?だったら申し訳ないです。」 「いや、むしろ定型発達は嫌いだ。何より、美形とはいえ何でこんな障害を併用している奴が1回やるのに30万で予約待ちなのかが気になる。アンタは何故自分がその価値を生み出しているのか分かるか?」 「なんでしょうね。4年間勤めてたら勝手に値段があがりそうなりました。」 「・・これは、どんどん価格が下がるな。」 呆れた顔で見られてしまうが、僕は僕なりに彼女の事を観察している。 「本当に凄い観察眼です。何より、僕の知能に合わせて会話してくれている。凄く話しやすいです。」 「!」 「職業的に見ても、IQ高そうですよね。差が離れるほど会話が成り立たない。」 「あぁ、IQは130ある。アンタだけじゃなく、基本私が合わせてる。」 「幼少期、療育受けてきましたか?」 「あぁ。」 「理解ある親御さんですね。」 「・・ボッーとしていると思ったけど、アンタの価値が少し理解出来た。でも、30万はない。」 少し僕の事を認めてくれたらしく、強い発音のアクセントは和らいだが、アスペルガー特有の淡々とした言い方は変わらずだ。 そして、ムッとした顔も変わらず。僕は心の中でムーちゃんとあだ名をつけた。
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