09:ムーちゃん

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「・・本当に私が皆の会話レベルを合わせている。なのに定型発達は表面上は仲良しゴッコ、裏で自分勝手だとか冷酷とほざく。合理的に効率よく物事を進めているだけなのに。むしろ、優秀な私に合わせろ。」 「アハハハッ!」 「何故笑うの。」 「皆、ムーちゃんの知能や能力に合わせられないから、ムーちゃんが合わせなきゃいけない状況なのになって!」 的を得たツッコミだったと思う。それはムーちゃんも感じたらしく、更にムムッと顔を歪ませ別の部分で突っかかってくる。 「ムーちゃんって何。私の名前にムの字など入ってない。」 「すみません。ムッとしてるから勝手にムーちゃんと名付けちゃいました。」 「勝手に名付けるのもそうだけど、それ以上に人を不快にさせる単語を選らんでいる所を自重すべき。」 「確かに。でももうムーちゃんで覚えちゃいました。」 「 そもそも、正式名があるのに不快になるリスクを犯すあだ名という存在意義がわからない。」 「僕、人の顔と名前をなかなか覚えられないんです。特徴やエピソードを絡み付かせ仮の名前をつける事で、脳に深く刻み込めるんです。」 「なるほど。無能なりの手段か。」 「でも1番の目的は、親しみを込めてあだ名をつけてます。」 「親しみ・・関係の柔軟化・・。私には不可な事だ・・。」 ムッとした顔から、少し苦しそうな顔に変わった。 これは彼女なりに特性を把握して人と向き合ってきたタイプのアスペルガーだ。 ただどんなに錯誤させようとも特性故、線と点が一致出来ず寄り添う姿勢が伝わり辛いし本人も理解しきれない。努力しても報われない事は、とても苦しい。 「でもムーちゃんなりに関係を深めるために、沢山合わそうとしたり人と向き合ってきたんですよね。」 「過去形じゃない。今もだ。人の気持ちだけが本当に理解出来ない。それさえなければ、私は障害者というレッテルを剥がせるのに・・!世間はそれで私という存在を障害と切り離そうとする・・!」 あぁ、ムーちゃんの場合は診断が足を引っ張っているケースなのかもしれない。 アスペルガー等の発達障害は、個性との狭間だ。ある意味本人が気にしていないようなら、余計なお世話でもある。
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