10:フクちゃん

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電話を終わらせた後、僕は雪華さんが勤める会社に全額投資した。 ドーパミンドバドバ。 「久保さん、ちょっといいですか?」 ニマニマしてたであろう僕に話しかけたのは、深刻そうな顔をする横田君。 「どうしたの?」 「ちょっとお客様の事で相談があって。」 僕の人から貰う評価は、何を言ってるんだ、が基本。そんな中、横田君はよく僕に相談をしてくれるので嬉しいし可愛い後輩だと思っている。 「統合失調症・・。」 「話しに寄り添ってあげる位しか出来てなくて、何も改善してあげれてないんです・・。家族も協力的なのに。」 統合失調症。 幻覚や妄想、無気力等とただ生存するだけで地獄にいるような感覚の症状。 「本人の病院拒否ってことだよね。」 「幻覚に長く悩まされているようです。」 「僕の受け持つリピーターさんにも似た症状の人いるよ。付き合いは2年位・・幻覚は5年続いている。」 「5年!長いですね・・。」 「話しに寄り添いつつ信頼関係を得てから、なんか適当な瓶にいれた水を渡して幻覚に対抗する魔除けだと言ってあげたら、少し安らぐ時間が増えてきたよ。」 「なるほど、緩和させてるんですね。いつか治るといいですね・・。」 「そのためにも病院に行って貰いたいんだけどね・・せっかく治療が無理と言われてきた統合失調症が現在医療で抑える対処が見つかったのに。被害妄想が膨らみ激しい病院拒否。統合失調症の問題はそこだよね。・・僕らにもやってあげれる限度があるのかなって思うんだ。」 そう、仕事や自身にも感じているが、何事にも限度があるのだ。 特に今日1番に相手をするお客様を見て、そう思う。 「フクちゃん、来たよー。」 そう言って、僕はとあるアパートの扉を開けた。 女性の1人暮らしなのに不用心だ。でも彼女の場合は、閉め忘れてしまったか気力がなくなったかのどちらかである。 中はゴミの山で、コバエが飛び交っている。まぁ、いつもの事だ。 「久保っち~早めに来てくれて嬉しい~。」 「今日は残念ながら、長くいれないからね。片付けで全ての時間使っちゃいそうだから。」 スマホを片手に持って体を引きずるように出てきたのは、体がふくよかな女性。 わりと重めのADHDと判定されている。
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