10:フクちゃん

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僕はメトロノームを早いテンポでかけ、予め用意した清掃手順リストを確認する。まずは水場、次はゴミ処理。 荒れ狂うキッチンや風呂場を、クエン酸やタワシなどを使い急いで磨いてく。 「フクちゃん、お皿じゃなくて紙皿使ってよ。だったら、捨てるだけで済むのに。」 「いやぁ~、珍しくやる気スイッチが入ったから片付けられると思ったけど無理だったパターン。」 「そっか。せめて下にラップ引いてくれたら片付け楽なのに。」 「面倒くさくて~。」 「そっか。」 〆に除菌泡スプレーで浸け置きし、僕は床の片付けに取りかかる。といっても、フクちゃんの部屋はゴミばかりなので袋にいれるだけの片付けなのでかなり楽だ。 ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴ・・あっ、違った。危ない、通帳捨てるところだった。 「久保っち!見てみて~この動画たのしーよ!」 「後でね。」 「え~。」 「急がないとイチャイチャする時間なくなっちゃうよ?」 「そっか、それは嫌だな~。」 そう言って今までスマホを見てたフクちゃんは、片手を伸ばし5個ほどゴミを捨ててくれた。 「フクちゃん助かる、ありがとう!」 「私、頑張った!」 「うん、頑張った!」 「・・そう言ってくれるの、久保っちだけだよ。」 部屋と水場を片付け、後はフクちゃん自身を綺麗にする番だ。 僕は踏ん張りながら彼女を持ち上げ、お風呂場に運んだ。 「フクちゃん、また太った。」 「久保っち、容赦ないな~。」 「でも、今日は汗の臭い少ないね。」 「お風呂、3日前に入ったからね~!」 「そうなんだ!本当に頑張ったね、フクちゃん!そうだ。申し訳ないけど今日は時間ないから、今タイマーつけちゃうね。」 「もう充分オマケして貰ってる~いつもありがとね、久保っち!」 僕は洗面器にお湯をため彼女の好きなミントのアロマで芳香させてから、丁寧に髪や体を洗い上げた。 「久保っち、片付けやコミュニケーションとかさ、本当に成長したよね・・。」 「そりゃ、フクちゃんと出会ってから4年目だもん。慣れちゃうよ。」 「そっか~もうそんなに立つのか~。初めて会った時、久保っちはそそっかしくて可愛かったなぁ。」
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