10:フクちゃん

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ホテルを出るまで、僕らは手を繋いで歩いていた。だが、外へ出たら向かう方向は反対だったので、すぐ手を離しお互い別れた。 想像以上に時間が残っている。 こんな時は定番、ことりちゃんのお見舞い。 でも今日と明日は来ないで欲しいと言われてしまっている。 ことりちゃんは退院で、僕もお客様が3人でお互い忙しいから明日は仕方がないのは分かる。でも、今日会えないのはわからない。 そんな訳で、僕はことりちゃんの病室へ向かった。 「くおくん!?」 「ことりちゃん、来ちゃった。」 『このタイミングか!今日は両親と姉と弟来るから。』 「そうなんだ。」 『もう来ちゃう!ベッドの下に隠れてて!』 「えっ?」 なんで、と思いつつ素直にベッドに隠れた。 まぁそりゃそうだよね。風俗男を両親に見せたくないよね。 僕は静かに潜んでいると、凄くなまった方言の男女がことりちゃんの部屋に入り楽しそうに会話をし出した。 耳が悪いのも拍車にかかって、彼らが何を話しているかわからない。 そんな中、男性の足元に何かが落ち拾う際、ベッドの下の僕と目が合ってしまう。 僕はギリギリまで、猫のフリをして隠れる事に徹した。 「・・にゃあ!」 「わぁっ!にゃーとなく、むしゃんよか男がおる!ねえちゃん、まさかちこらしかなん?」 「えっ?」 家族総勢でベッドの下の僕の存在を確認し、ワーワーことりちゃんに詰め寄りだす。 僕はそんな中、のんびり這い出て自己紹介を始めた。 「初めまして。娘さんに大変お世話になっております。ベッドの下に隠された、久保と申す者です。」 一斉に家族の注目が集まり、方言で詰め寄りだす。そんな複数の言葉にパニックを起こしているのを察してか、辿々しい標準語でお母さんが皆を落ち着かせてくれた。 「方言じゃ伝わらないね。ごめんなさい。よく見舞いに来てくれる人がいるって娘に言われてましたが、あなたですよね?ありがとうございます。」 「あぁ、そうだ標準語!姉ちゃん、この人恋人?」 「えっー、本当にカッコいい!モデル?何をしている人なの?」
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