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僕は黙ってことりちゃんを観察した。なんて答えてくれるかな。
彼女が考え押し黙ってたどり着いた答えは・・。
『福祉の人!』
確かに福祉関係と言えなくもない。もしも職業の事を聞かれたらそう答えよう。
なるほどと思いつつも、距離のある関係にシュンとする。
そんな僕の表情で只ならない関係だと察した家族の人は、ことりちゃんを小突きだす。
ただ1人、お父さんだけは僕を睨んでいた。そして、手話で対談を求めてくる。
『本当に、福祉関係?手話使える?』
『はい、使えますよ。娘さんからよくお世話になっています。』
「!」
手話で返す僕に、お父さんは驚いた表情をされた。そんな彼を、家族がブーイングし出した。
「もう、うちの人ったら・・。すみません、疑ってしまって。」
「普段はもっと穏やかなんですよ。お父さんも唐突に男を見て動揺しちゃったんだよ。」
「父ちゃん、そぎゃんたまがらんちゃよかばい。」
「・・・・。」
「姉ちゃん可愛くなった!絶対久保さんの影響でしょ!」
話しつつも、ことりちゃんにも分かりやすいよう皆手話で対応している。
理解のある優しそうなご家族だ。
「ことりちゃん、地方出身なんだ。」
『うん。都会の生活に憧れて、こっちに来た。』
「引きこもりなのに?変わらないような。」
「何よ、都会に来たら外出沢山するって言ってたのに!また引きこもってるの!?もう帰ってくればいいじゃない!」
『嫌!それに都会と田舎の引きこもりはだいぶ違う!特に物資の流通!』
「やっぱ数時間で、物が届く世界なの?いいなぁ。」
「私もこっちに住みたい~。」
そう東京に夢を膨らます、お姉さんと弟さん。だがお父さんの怒鳴り声で空気が一変する。
「駄目だ!!今回の件で、東京は危ないと分かっただろう!?障害者という理由で突き落とされ、ハッキリと仲の言えない男と一緒にいて・・お前は耳が聞こえず何も出来ないんだから、いい加減帰ってこい!!!」
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