10:フクちゃん

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お父さんの言い分はわかる。都会に来て危ない目に合ってる事実やハッキリとした関係ではない男。不安要素は沢山あるかもしれない。 ただ、耳が聞こえないから何も出来ないという認識は間違っている。 「お言葉ですが、娘さんは何でも出来る方です。工夫された部屋、自活出来る収入。彼女には何も障害はなく、耳のハンデがあるという事にとらわれがちです。少なくとも僕は、ハンデを感じず笑顔で自立した彼女に惹かれました。」 「・・・・。」 「確かに、娘さんがご両親にハッキリと紹介をしてくる仲は築けてません。でも、僕の気持ちは本当です。可能なら毎日会いに行こうと思った相手は初めてです。借金がなくなったら、僕は正式に彼女へ告白し、ご挨拶に伺います。」 「借金!?やっぱりこの男は駄目だ!」 『お父さん、借金は家族が作ったの。久保君はそれを必死に返してるの。』 「それが本当の話しだとしても、借金があるのは変わらない!!」 『でも彼は、働いて返している。父親が行方不明、母親が脳卒中で寝たきり。そんな過酷な中でも、私と笑って一緒に居てくれる。立派な人。』 「そうだとしても、この男は駄目だ!!!」 何を言ってもガンに自分の意見を通そうとするお父さん。 そして、最後に僕が納得する返答がきた。 「この男、普通じゃない何かを感じるんだ・・!絶対娘を不幸にする・・!」 あぁ、普通じゃないと分かる人なんだ。 僕は僕なりに消しているが、どうしても独特な空気は残ってしまい、勘づく人には一発で分かる。 そして、何も言い返せない。 そんなお父さんにことりちゃんが一番腹を立てたらしく、彼女は険しい顔で近くにある枕を握りつぶしている。 「か・え・りぇ・・!」 「なっ・・父親に向かって何を・・!」 『明日、退院自分で何とかするから。はやく帰って。』 「ぞうくるな!!!」 『色々決めつけないで。お父さんがこんなんだから、私は出ていったの。帰って!』 お互い顔を赤くして睨み付け、お父さんは病室を出ていき、慌てて家族が追いかけていく。
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