10:フクちゃん

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「お父さん、失礼だって!待ってよ・・!久保さん、ごめんなさい・・!」 「久保さん、本当に失礼しました!またアナタに会えるのを待っています・・!」 「姉ちゃん、また明日・・!」 お父さんは過保護な所があるけど、ことりちゃんに寄り添う暖かい家族。そんな家族を僕という存在で空気を一変させてしまった。 『ごめんね、久保君。』 「・・僕の方が、ごめん・・。来ないでって言ったのに来ちゃって・・。」 『いやいや!むしろ、私は想像以上に久保君に愛されている事が分かって幸せだった!』 「・・ごめんね・・お父さんに嫌な思いさせちゃって・・。」 『あの人昔からああだから気にしないで欲しい(笑)私に凄く過保護だから、男ってだけで色々気にくわないだけだよ!』 いや、僕という存在事態を否定していた。相性とは違う根本的な潜在能力で人というカタチの異物を見分ける目。 あの目は怖い。きっと、安定した遺伝子を求むための能力なのだろうが、弾かれる側は恐怖でしかない。どう対策しようと、乗り越えられない壁なのだから。 小学生の時、母のおにぎりを馬鹿にされ怒りのあまりに教室をグシャグシャにした翌日、クラスメイトや先生はあの目をしていた。近づいたり触れてはいけない異物を見る目。 僕が存在してごめんなさい。空気が読めない中でも、そう感じてしまった。 「くおくん・・。」 不安そうな声で話しかけることりちゃんに、僕は自身の異常な様子に気付けた。 尋常じゃない位体が震えあがり、大量の涙を流していた。 そんな僕に対し、彼女は両手を広げてハグを求めてきてくれる。素直に腕の中に身を預け震えあがった。 『私の父が、傷付けてしまいごめんなさい。そして、久保君の未来に私がいることを知れて嬉しかった。今日はずっとこうしてよ。』 そう書いたホワイトボードを見せられ、彼女の抱き締めてくれる力が強くなった。 僕はただ身を委ね震えあがるばかりであった。 ことりちゃん。どうやら僕らに、関係の限界がありそうだ。少なくとも、ご家族皆で仲の良い良好な関係は築けそうにない。 少なくとも、僕はことりちゃんのお父さんに会いたくないし向こうも同じ気持ちだろう。
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