10:フクちゃん

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その後、ムーちゃんの奢りで高いホテルへ行った。本当に、ただ整体を受けるための行為として。 その間株の事に関して散々文句を言われたが、マッサージの技術に関してはありったけ褒めてくれた。それは、心底感じた僕に対する評価だ。嬉しい。 今日は嫌な事が多かったけど、最後は楽しかったのはムーちゃんのおかげだ。 ただ、忘れっぽい僕なのにことりちゃんのお父さんの事が頭から離れないでいる。普段はよく忘れてしまう癖に、こういう事は忘れないのが腹立たしい。 早く忘れてしまえ。そう願いつつ、明日のスケジュールを確認した。 「あっ・・フクちゃん・・。」 危ない、大切な事が抜けていた。何でこういうのは抜けてしまうのだろう。手帳とスマホのスケジュールを駆使し書かれていた予定に、更に毎朝確認するカレンダーに書き込んだ。 フクちゃん用の移動すべき時間のタイマーをスマホに入れてあることを確認をした後布団に入った。 お昼時に会うから、彼女分も作ってこよう。フクちゃん、おにぎり何個食べるかな。ツナ昆布は好きかな。 そう考えながら眠りにつき迎えた翌日。 僕は普段のルーティングと仕事をこなし、フクちゃんとの待ち合わせの場所に向かった。 待ち合わせ5分前、まだフクちゃんは来ていない。株価やネットニュースを見ながら待っていたが一向に来る気配がなく、終わりの5分前になったらおにぎりを急いで口に頬張った。 行かなきゃいけないギリギリまで待ってみたが、フクちゃんは来ない。 彼女と僕の関係では、特性を越える事の出来ない限界があった。
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