11:こわいひと

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お昼を済ませ、余った時間はエクセルを教えてくれた。 僕は物覚えが悪くてよく人を怒らしているが、雪華さんは嫌な顔をせず教え方を工夫してくれるので非常にありがたい。 見本を見せて貰って理解が出来ない状態でメモを取り、訳の分からないメモが完成する。もちろん、とった本人も意味不明。 雪華さんはそのメモを分かりやすいように書き直してくれるが、脳が独自の解釈で誤認識やアレンジをしだし、目茶苦茶なやり方をしてしまう。そして、そのメモをよく失くすという。 で、最終的な手段としてたどり着いたのは、雪華さんの操作方法を動画に撮る事と、メモなど一切せず体で覚える事。 そして、数回繰り返し僕はやっと1つの表を作り上げれた。 「久保君出来たね、成長した!」 「・・やっとって感じだよね。このペースは仕事で通用しないよね。」 「そうね、だから予め一緒にやれて良かった。理解に繋がったら、久保君一気に伸びてくれて教えがいがある。」 「この何も出来ない状態で来たら、雪華さんどうする?」 「あくまでもうちの部署の場合だけど、お互い周りから嫌われる覚悟で営業に特化させ、雑務は私・・最悪他の人に仕事を振り分ける。給与が歩合制な部分もあるから、本当に嫌われるけど。その人間関係を乗り越えれるかは、久保君に任せちゃうと思う。」 「その営業すら実際出来なかったら?」 「そこは大丈夫そうだけど、もしもそうだったら良い点を見つけてあげて人事に相談し、もっと息のしやすい場所を探す。最悪、本人の意識改善を促す。ただ、意識改善って実感して修正するものだから難しいわね。1番の特効薬は仕事の楽しさを見出だす事だと思うし。」 「良い上司!」 「まぁ今のやり方はあくまでも久保君の場合だけどね・・ただ、人を育てるという考えを深められるようになったのは、久保君のおかげ。君に出会えて良かった、ありがとう。」 そう会話を区切らせ、再度エクセルのやり方を教えてくれる。若干、頭を撫でて褒めてくれる事に期待したけど、彼女は一切触ってこない。触れるのは、僕のお仕事の時間と帰りにバイクで送る際の自然な体の密着のみ。
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