11:こわいひと

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集中しないと聞こえなくなってしまうメトロノームの音に、意識して合わせて動くのは大変だったけれど、今までの何倍も早く動けるようになり、この手法は今も使わせて貰っている。 そして、そんな部屋の掃除をしている時、たまたまAVの撮影を見てしまい、更に母のレイプ以降、僕はいつかこっち側の人間になることを悟った。 「和泉さん、僕の動作って気持ち悪いでしょ?」 「あぁ。いきなりどうした。」 「僕は女性を、セックスで喜ばせる立場になるんでしょ?だから、その気持ち悪い要素を消したくて。どうすればいい?」 笑顔を失くした時期そんな問いをした瞬間、サングラスの下から涙が1つ溢れ落ちてきた。 当時中学生だったかな。まだ人は同情をすると涙を流す原理をうまく把握していなかったため、僕はこわいひとの行為に頭を傾げた。 「動作が綺麗な人のマネをして、自分のものにする事だな。とりあえず、芸能人の動きを鏡で真似ろ。後、トーク力も鍛えておけ。協力する。」 「ありがとう。」 「・・後は、障害の知識だな。」 「まぁ、それを乗り越えないと人に近づけないよね。」 「もちろんそれもそうだが・・久保、実はお前のメインの落とし先を、障害者用の風俗が妥当だと俺は考えている。」 「そんなものがあるの?」 「いや、まだない。これからだ。人の心に飢える障害者をメインに高値で売春させる予定なんだ。」 「障害者が、高いお金を払って障害者を抱くの?」 「もちろん、お前の障害は黙秘だ。だからこそ確実に見た感じには消していくぞ。後、精神障害はもちろんだが、点字や手話など身体障害にも対応出来る技術をつけておけ。」 僕は小学校以降は学校では学ばず、こわいひとの元で僕特有の未来のための勉強をしてきた。 「終わりました。いかがですか?」 美容師の声で現実に引き寄せられ、自分の髪型を確認する。 スッキリしたが、何が変わったのかはよくわからない。ただ念入りに僕の髪をチェックしたこわいひと的には、なかなかの出来だったらしい。先程の不機嫌さは少し落ち着いた。 「腕はいいようだな。腕はな。」
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