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美容院を出て、真っ先に評価を下すこわいひと。
「接客がなってない。今回もリピートなしだ。」
「えー・・僕はさっさとどこかの常連になって、落ち着きたいんだけどなぁ。和泉さん、厳しいですよ。」
「うるさい。文句言うなら、指摘される前に髪を切りに行け。」
そう怒られたが、約束通りアイスという名のご褒美をくれた。おまけに専門店のお高いもの。
「わぁ、こわいひとありがとう!」
「せっかくの俺の頂きものだ、目の前で美味しそうに食って終わらせろよ。」
「うん。頂きます。」
さすが専門店。味が濃厚で美味しい。
それが顔に出ていたらしく、こわいひとは満足げだ。
「久保、うまいだろ。俺のきめ細かいリサーチあってのアイスだ。」
「うん。」
本当にこの人は、僕の嬉しそうにする顔を見ると喜んでくれる。
そして僕に感情がなくなった日、誰よりも悲しんでくれた。
僕はこの人の事をよく知らない。
知っているのは、風の噂で聞いた僕と似たようなハンデを持つ娘さんがいた事。そして今見える状況は、僕に情を持ち娘さんと重ねている。下手したら、僕で子育てをリベンジしてそうな気さえする。
僕がこわいひとと呼ぶ理由。
それは、必要以上に僕へ入り込んでくる事だ。
「あっ、あの店にある猫のTシャツ可愛い。」
「何だよこの、突撃だにゃーTシャツ。却下。」
「これでお客様の所に突撃したら楽しくないですか?」
「楽しくない、しらける。却下。」
「じゃあ、この平和だにゃーTシャツは?」
「却下。」
「僕の買うものなのに、親のようにグチグチ言って。」
「じゃあ、親のようにグチグチ言われなくなるよう頑張れよ。」
「・・うん。」
僕はこわいひとの事を知らないけど、知ろうともしてない。あえて距離感をとっている。そして、いつか彼から離れようと思う。
ようは、完璧な自立。
それが僕にとって、彼に唯一してあげれるお返しだ。何より、色々細かいこわいひとが特性持ちの僕といるのは大変な事だと目に見えている。
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