11:こわいひと

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「あっ・・。」 鳴ったスマホを開くと、とある人物からラインが届き、僕は急いでアイスを口に頬張った。 「俺の頂き物を雑に食いやがって。」 「和泉さんと食べる暇なくなったから。」 「何だ、女でも出来たか?」 「・・・・。」 「分かりやすい奴だな。道与の件でトラウマになって恋愛しないと思ってた。」 「・・初恋さんはトラウマだけど、それとこれは別。」 「ふーん。今日は病院も行くのか?」 「行かない。この前行ったばかりだし。」 「でも、お客様が1人の日に必ず病院に行くお前がなぁ・・いや、いいな。そうやって母親から離れてけ。いっそう、生命装置外しちまえ。ただのお前の負担だ。」 顔を掴み、そう訴えかけるこわいひと。 この人は本当に、僕の家族が嫌いだ。それを僕に押し付ける所は彼の嫌なところだ。 「別に負担ではないよ。」 「確実に金の面で、負担かけてるぞ。」 「あっ、そうだ。和泉さんに聞いときたい事を思い出した。僕の借金って幾らある?」 「・・それ、初めて聞いてきたな。」 「うん。早く返したくなっちゃって。」 「そうか。そこまで本気の女が出来たか。」 掴んだ手は頭に移動し、思いっきり頭を撫で付けた。物凄く嬉しそうに笑いながら。 「安心しろ、今のペースなら30代で返済出来る。」 「そうなんだ。」 「何より、組織が性業界で需要がなくなったら扱いが面倒なお前と縁を切りたいようだ。」 「わぁ、僕嫌われもの!」 「逆に言うと、闇業界から足を洗いやすい。店的には困るが、充分徴収出来てるから途中で逃げてもたいして追ってこないだろ。」 前向きな事を言われたが、具体的な数字を書いた紙を渡され僕は途方に暮れた。 でもまぁ、終わりがあるようだしなんとかなる。 「・・久保。さすがに察しているだろうが、この仕事はいつまでもやれない。だから、先の事を少し考え始めろ。」 「あれ、僕が未来を考える事は向かず病むからやめるべきじゃなかったっけ?」 「具体的に借金と向き合うようになったお前なら別だ。その先に光もありそうだしな。」
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