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「この絵ってさ、僕がいなくても描けるものじゃないの?僕という存在が一切感じられない。」
「いや、久保がいないと描けない。」
「・・この1枚が300万かぁ・・。」
「ボクの絵はそれぐらいの価値はある。まず1つは、話題性。この老けない中性的な美貌で両手がなく手足で描くインパクト。2つめは、この色使いはボクにしか出来ない唯一無二の存在だから。3つめは、ボクの伝える孤独さは人の心を動かす。現に、ボクは自身の絵で人を殺した事がある。」
「中二病かな?」
「本当だよ。ボクを評価してくれた審査員、自殺しちゃったんだよ。遺言書には、ボクの絵を見て孤独に気付き堪えられなくなって自殺したって書いてあってね。もしかすると、ボクが知らないところでもっと自殺しているのかも。」
「・・分からないなぁ。あ、でも僕のお客様の中にアーティスちゃんのファンがいてさ・・。」
「あぁ、老舗やの洋菓子チェーン店の令嬢だよね?」
まさしく、うさぎちゃんの事だ。
一回も話した事がないのに何で分かったのだろう。そんな疑問が顔に出ていたらしく、アーティスちゃんが笑いながら教えてくれる。
「その子、久保を題材にした絵しか買わないんだ。だから、久保の客なのかなって。」
「こんな抽象的な絵で、よく僕だって分かるなぁ。」
「久保が鈍感なだけだよ。その鈍感さが、人の心を殺しちゃいそう。さぁ、この絵の2人は、久保に殺されちゃうかな?」
1人は分からないけど、もう1人は確実にことりちゃんの事だ。
「絶対、幸せにしてあげるんだ。」
「ボクの絵以上に抽象的な答えだけど大丈夫?久保にそんな事が出来ると思う?」
「・・色々な手段を見つけて、してみせる。少なくとも僕は、そうやって生きてきたんだから。」
「くくっ・・無理無理。久保はボクと同じこっち側だよ。一生孤独。人と分かち合えない。」
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