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怒りがドンドン積もれば積もる程、アーティスちゃんは喜んでしまう。僕は深呼吸して自分を落ち着かせるが、彼女は言葉で責めていく。
「久保、怒っていいんだよ?無理に人間をしなくていいんだよ?この、高い芸術品を壊しまくって、ボクを殺してもいいんだよ?ボクね、久保の中に潜む凶悪な魔物を見たいんだ。いるでしょ?衝動的に壊したくなる何かが。ボク、そんな久保を見たら凄い作品が描けそうなんだ・・!」
そう挑発されている最中、運良くタイマーが鳴った。僕はすぐさま服を着替える。
「久保、時間的にボクは最後のお客様でしょ。オマケしてもっと居てよ。」
「嫌だ。」
「つれないなぁ。まぁいいや。あの2つの色が久保をどうしてくれるか楽しみにしてる。愛してるよ久保。」
「訳が分からない。」
そう冷たい一言を発し、僕は家を出た。
こんな塩対応でもアーティスちゃんは喜んでまた雇うだろう。
「あぁぁぁぁっ・・。」
帰路を歩きながら僕は唸り声をあげ、必死に怒りを抑えている。
「大丈夫だよ、僕。終わったから。」
そう自分をなだめたが、お腹と心臓にかけてくるムカムカが収まらない。
こういう時は、ことりちゃんに限る。
彼女と話すだけで、全てがそこに行き心が収まる。
僕は電話をかけてみるが、彼女は出なかった。前までは僕の連絡にすぐ出る印象であったが、最近はなかなか気付いて貰えないでいる。仕事が忙しいと言っていたが、寂しい気持ちになってしまう。
過去のことりちゃんのご両親の件もあり、アポなしで自宅へ訪れる気も起きず、感情のやり場に困り果てた。
そんな時、少し前に届いた誘いのラインに気付きテンションが上がった。
「ムーちゃん!」
「・・やっぱり解散。」
「何で!?ムーちゃんから呼んだのに。」
「泣いた痕跡があるから。てか、仕事終わりって情緒不安定な事が多いの?めんどくさい。」
「日によるかな?でも今は、カラオケ店で絶叫してきてスッキリしたばっかだし、なんで泣いたのか忘れちゃった。」
「ふーん。トリアタマも悪いものじゃないな。」
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