12:アーティスちゃん

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そう普段通り毒を吐くムーちゃん。初対面の時は厳しいと思った毒舌も、今では可愛らしい彼女の個性だ。 特に、今日一緒に向かう所で、彼女の可愛さは僕の中で底上げされる。 「猫楽しみ。まさかムーちゃんがペットに興味あるなんて。」 「生き物に抱きつく事で出るオキトシン放出故のアスペルガー緩和目的だけど。で、世話出来なかったら久保にぶん投げる。」 「猫楽しみ!」 「・・嫌じゃないのか?世話代は私持ちとはいえ、育てられなきゃ押し付けられるって行為。」 「別に?最終的に、猫が幸せならそれでいいんじゃないかな。ムーちゃんが世話できないなら、僕が大切にする!」 「そうだな。猫が最終的にそれでいいならいいことだよな。」 そんな訳で、僕らはペットショップへ向かった。 出迎えてくれたのはもちろん、可愛らしい愛玩動物達。だが、ムーちゃんが近寄った瞬間、皆威嚇し始めた。 「・・何故だ。」 「ムーちゃんだからだよ。お顔が、ムーだから。」 「・・・・。」 「ほら、お顔がムーだよ?ニコーしよう!」 「・・ニコーか。」 「うん!ニコー!」 「・・ニコー・・。」 全動物達が、更に威嚇した。 鋭く睨まれる動物達の視線をくぐり抜け、僕達は猫のコーナーに向かった。 そんな中で、僕は一匹のアメリカンショートヘアの子猫と目があい、お互い何処と無く惹かれあった。 店員さんにお願いし持たせて貰うと、僕の手の中でゴロゴロ甘えだす。 「ムーちゃん、この子凄く人懐っこくて可愛いよ!」 振り返るムーちゃんに対し、全力で逃げる猫。残念。 結局、ムーちゃんに懐く猫と出会えずペットショップを後にした。 「ムーちゃん、残念だったね。」 「・・10件位寄ったが、1匹も懐かれた試しがない。」 「逆にそんな中で懐いてくれる子と出逢えたら、運命なんじゃないかな。」 「もう出逢える気がしないんだが。」 そう嘆いているムーちゃん。 だが、そんな話しをするなか、一匹の猫がニャーと声をあげて混じってきた。 白く長い毛がボサボサとして、片目が潰れている猫。 「・・野良か。」 「人懐っこい!可愛い!」 「・・目に障害がある。」 「片目、綺麗なブルーなのに勿体ないよね。手術で治らないかな?あとこの子、ムーちゃんに向かって鳴いてない?」 「そうか?」
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