02:ぐるぐるちゃん

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唖然とし、彼の目から一筋の涙が溢れだす。そして、言葉も溢れだす。 「全然、見つからなかったんだ・・じゅ・・重度の女性障害者の性を解消してくれるところ・・。」 「そうですよね、男でしたら気軽な価格の福祉が存在しますが、女性の場合の性は複雑ですからね。」 涙腺は緩み、滝のように流れ出した。 そりゃそうだよね。そんな彼の前で、道具の使い方や彼女の性感帯を紙に書きながら説明する。あいにく僕は字や絵が下手なので伝えきれたか不安だったが、お父さんは喜んで受け取ってくれた。 そこから、記憶にない。 多分寝てしまったのであろう。目をあけると、ぐるぐるちゃんが正座で僕を眺めていた。 目が合うとそらされ、離れた場所でビー玉遊びをし始めだす。 少し離れた場所から、お味噌汁の良い香りがする。自然と体もそっちの方に向く。 すると、こちらに近づくお父さんの姿が見えた。 「久保さん、ご飯の前にお風呂でも。」 「えっ、いいんですか?」 「くくっ・・寝落ちる前に、お風呂はいりたい、ご飯も食べたいって・・。」 「あははっ!寝る前の僕、ナイスだなぁ。お風呂入りたいし、ご飯も食べたいです!」 やった、五右衛門風呂。 木製の樽の底から、火が燃える音が聞こえる。僕は再度体を洗った。 五右衛門風呂に入る際、大きめの窓から外が見え、いつの間にか移動して焚き火を眺めるぐるぐるちゃんの姿が見える。 「一緒に入る?」 そう誘い込んだが、僕を無視し見続けている。火のチリチリという音や揺らめきっていいよね。僕もじっくり見ちゃうタイプだから分かる。 湯船に入ると上の景色が楽しめ、星と三日月が夜空を彩っていた。 「な、なぁ・・。俺と一緒に入ってくれるか・・?」 そう、お父さんが顔を半分覗かせお風呂場を眺めてくる。 その姿は、僕がシャワーを借りる際除き見るぐるぐるちゃんとそっくりだった。親子だなぁ。
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