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「久保さん、おはようございます!今日、ケーキを作って来たんです!良かったら1日1個のお菓子として、食べてください!」
そう横田君が、朝から事務所でケーキを渡してくれる。
その光景を見て仕事仲間が「おもっ!」とツッコミをいれるが、横田君は「やっぱり朝からケーキは胃に重いですかね~」と斜め上な捉え方をしていた。
生クリームたっぷりのイチゴケーキ。小麦粉は控えているのだが、凄く美味しそうだ。
だけどこれ・・
「1個じゃないな、それ。1ホールだな。」
さすが、こわいひと!僕と付き合いが長いだけのことはある。
そんな言葉の意味を、横田君はいまいち頭では分かってないようだ。
「えっと、ようは大きいってことですかね・・?じゃあ包丁で切って・・。」
「それは、1切れだな。」
「えっ・・えぇっ!?じゃあ、久保さん、食べてくれないんですか!?」
こわいひとは、眉間にシワを寄せ更に恐い顔になって少し悩んだあと、クッキーの型を持ってきてケーキの中心をくり貫いてくれた。
「久保、これで1個になったな。」
「うん、1個だ。」
「わぁー!!これで久保さん食べてくれるんですね・・!」
「ありがとう。あとで、食べるね。」
「今目の前で、美味しそうに食べてくれないんですか・・!?」
「コイツ、14~16時の間じゃなきゃ、絶対間食べないぞ。安心しろ、代わりに俺が目の前で美味しく食べてやる。」
「和泉さん、マジっすか・・。」
明らかに、横田君の心が折れている。まぁ、そりゃそうだよね。
僕はそんな彼とケーキを、写真に納めた。
「これで横田君のケーキ、永久に残せる。」
「永久・・!」
「お菓子の時間、本当に楽しみだよ。」
凄い愛だよなぁ。こんな慕われているなら、何時なんどきでも彼の顔が分かるようになりたいので、写真が手にはいるのはありがたい。
興味ない訳ではないのに、なんでこんなにも人の顔を覚えられないんだろう。そんな自分に少し疲れつつ、僕らはスケジュールを確認していく。
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