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結構、仕事で会った人が僕に思っているであろう疑問を率直にぶつけられた。
そんなご夫婦の背後に隠れるこわいひとが、人差し指で口に線を引いた後グーで親指を下げ、一般的には死ねよという捉え方のポーズで指示してくる。
多分、黙ってテンション下がった風にしろという合図だろう。
僕は素直に従い、重い顔で黙りこみ代わりにオカマさんが説明した。
「彼、ご両親の借金の返済でここに流されました。」
「えっ・・。」
「そして、レイプされた過去があり、薬がないと上手く勃起が出来ないんです。ただ、傷付いた分、どんな女性にも優しく出来る子です。だから、この業界で1番上にのしあがれたんだと思います。」
同情的な眼差しで見つめられつつ、夫婦は僕に問いかける。
「辛い、ですよね・・どんな気持ちで、働かれているのでしょうか・・。」
「思われるほど、辛い気持ちを引きずって仕事はしてないです。僕、女性に尽くし快感的になり射精にいたる行為が、凄く好きなんです。・・と、薬がないと僕の場合、勃ちませんが。逆にその分、勢いで女性に荒くする事はありません。僕のモットーは、一緒に気持ちよくなることです。もちろん、娘さんに求められなかったら、なにもしません。」
そう、普段の僕のように明るく答えると、ご夫婦は和らいだ表情になった。
「面談して良かったです。アナタになら、娘を任せられます。」
「久保君も良かったね。3級のADHDなんて、定型と変わらないじゃん。普段もっと重たい子としてるんだから、つかの間の休憩になるんじゃない?」
嫌だな、特性が濃い程お客様を見下すような言い分。
オカマさんの発言に不快になったが、その話しに安心しているご両親を見て、苦笑いに変換され顔に出てしまう。
そんなご夫婦にスペアキーを渡され、僕は堂々と玄関から家へ入った。
中は、娘さんと僕だけだ。
シャワーを借り体を洗い、自分で用意した服を着る。
娘さんの愛する男の子のキャラクターに似た格好。
喜んでくれればと思い自腹で買ったが、もう二度と着ることはないだろう。正直ダサい。
そのキャラクターは、主人公の事を「おねーちゃん」といい慕っているので、まだ素性を知らないが、おねーちゃんというあだ名を彼女につけた。
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