03:おねーちゃん

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うるさかったかな?僕は黙ってポーズをとり続けた。 カリカリと鉛筆を動かす音だけが聞こえる空間。気まずくなったのか、はたまた顔がお互いに見えない故話しやすくなったのか、真相は分からないが、おねーちゃんはポツポツと私情を呟いてくれた。 「ねぇ・・障害者専用の、出張風俗の人なんだよね・・。わ、私の障害のこと、聞いてる?」 「うん。」 「あははっ・・もう、本当に情けないんだよ、私の人生。他人より絵が描けると思って美大に行ったけど、上の人たちが沢山いてさ・・それで現実見えて会社員やったら、ミスばかりで邪険にされ、挙げ句の果てに障害発覚・・最悪だよ。だから人より何も出来なかったんだ・・もっと努力しろと言われて自分なりにしてきたけど、怠けてるって・・。でも自分が動くとその周りが迷惑をかけて・・引きこもったら親に迷惑かけてて・・息をするだけで迷惑がかかる・・どうすればいいんやら・・。」 少し震えた泣きそうな声に、胸が苦しくなった。 ADHD不注意型。側から見て問題が見えにくい分見過ごされやすいが、脳の一部の動きが上手く調節が出来ず、集中力が切れやすくケアレスミスや整理整頓と時間管理などが出来ない障害。側から見て怠けているように見えてしまうため、そこで人間関係に亀裂が入り二次障害に繋がってしまう。 「久保さんだっけ。お客さんの中に、私と同じ障害でうまくやれている人って知らない・・?」 「うーん。・・同じADHDだけど、本当にそれぞれ違うからなぁ。おねーちゃんみたいに、絵に関することに過集中してヌードが上手に描ける人は初めてだよ。」 「・・中途半端な技術で、お金には繋がらないけどね・・。」 「技術でお金うんぬんは分からないけど、今目の前にいる僕は、おねーちゃんの絵を凄く楽しみにしているよ。」
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