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仕事のリュックを背負い、玄関の鏡に立ち最終確認。
身だしなみ整っているよね。スマホのカメラで、鏡にうつっている自分を撮った。
あ、リュックの紐が捻れている。スマホの写真で気付けすぐに直し、訂正した姿の写真をこわいひとに送った。
+ベルトのし忘れ、ポケット出てる。靴は焦げ茶の革靴とあわせろ。
なるほど、よく気付くなぁ。
そう関心しつつ僕は更に手直しして、鍵をかけたか2度確認して家を出た。
「久保さん、さすがです!!もぅ、さすが惚れ込んだ先輩です!!!」
店の事務所について、真っ先に駆け寄ったのは横田君。なんだか、異常に興奮している。
「どうしたの?」
「あれ、知らないんですか?久保さん、昇格したんですよ!1回するのに30万の男!」
「さんじゅっ・・えっ?10万からそんな上がったの?」
「俺が来たときから、久保さんの価格25万でしたよ。」
「えっ?」
「知らなかったんですか・・!?」
「久保は本当に、金に興味ない・・というより、稼いだり借金していることにも自覚ないからな。」
そうツッコミながら、封筒とお客様の情報が書いてある名簿をこわいひとが渡してくれる。
封筒の中の5千円を財布にしまいこむと、横田君は口をポカンとさせて問いかけてきた。
「あれ、久保さんの交通費ってカードじゃなくて、現金なんですか?」
「カードだよ。この現金は、1日の生活費。」
「1回30万の男が、1日の生活費5千円・・!?和泉さん、さすがにそれ酷くないですか・・!?」
「家賃光熱費別、借金持ちで5千円なんて贅沢だろ。ちなみに、コイツの服や装飾品、税金類の管理までしてやってる。」
そんな和泉さんの返答に、口をあんぐり開いてしまう横田君。そのまま、こう一言呟いた。
「和泉さん、お母さんっすね・・。」
ねぇ、赤の他人なのに過保護だよね。
そうツッコミたかったが、「その辺りは、血筋を通して信頼してない」と言われるのが目に見えてたので、僕はお客様名簿に視線を切り替えた。
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