05:ことりちゃん

3/18
前へ
/314ページ
次へ
生け花に抹茶を好みそうな風貌をしているのに、野球とビールは意外だなぁ。 そして、彼女との会話が面白い。 と思っていたのだが、門の前にたつ別れ際の台詞で一変した。 「でもまぁ、今1番のストレス解消は、貴方に抱かれる事です。いつか買います。楽しみにしています。」 するんだろうなぁと察していたが、やっぱり僕を買うんだね。 うさぎちゃんとメイドさんのダブルパンチで、ドッと疲れが爆発する。 それが顔に出てたらしく、彼女は大笑いをしながら門を閉めた。 「ぁぁぁぁぁぁ・・。」 次のお客様がいるのに、切り替えないと。僕は深呼吸をし、気分転換に公園でお昼ご飯を取り出した。 「おにぎり、お疲れ様。ツナと塩昆布が合わさって最強だよ。」 普段の通りに自分を褒めようとしてたら、何故かおにぎりを愛でてしまう。 自分が想像以上に疲れている事を察す。 口の中におにぎりを放り込むと、魚に塩気と海草の風味がまざり、海をイメージさせる味。 さすがツナ昆布、僕の中でのおにぎりの王様だ。 ご飯で少し心が満たされ、歯磨きをした後次の顧客情報を確認する。 相手は28歳、聴覚障害の持ち主。 手書きで書かれた文を見る限り、凄く印象が良い。綺麗な字で簡潔ながらも伝えるべき事を相手に分かりやすく記入されている。 特性の部分が特にありがたい。 だいたい、一言だけで終わるか逆に細かく明記されている場合が多く戸惑ってしまう。 同じ特性でも、人それぞれ。 例えば聴覚障害だったとしても、様々なタイプがあるのだ。 音の振動のキャッチが出来ない、電音性難聴。一般の人がイメージする難聴者。 音は認識するけど、脳の神経伝達に異常がある感音性難聴。実は、こちら側の難聴障害者の方が多く、本人も気付いてない場合がある。 実は僕も後者の節があり、音としては聞こえているが言葉で認識出来ない時があり、前後の会話で予想したり相手の口を動きを見て補っている。 お客様は、前者。 生まれた時からの、先天性の難聴。 手話や口話を習得し、補聴器で人とのコミュニケーション難はないものの、生活音は聴こえづらいとのこと。
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加