05:ことりちゃん

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在宅でウェブデザインの仕事で家計を賄い、独り暮らしをしている。その自立した姿勢が僕の中でポイントが高く、結構会うのが楽しみだ。 同じ都内でもうさぎちゃんの家からかなり離れた場所にある、パステルピンクのアパートの1階。 インターホンを鳴らすと、僅かに歩く音が聞こえ、扉がゆっくり開いた。 出てきたのは、セミロングのゆるくウェーブのかかった髪の背の低い女性。清楚な雰囲気で男受けの良さそうな可愛らしい顔をしている。そして僕にとっては、背景に紛れてしまいそうな特徴の薄い顔。 少し眩しそうに目を細めた後、彼女は頭を下げてくれた。 「はじめまして、PUZZLEの久保です。日常会話なら、少し手話が使えます。よろしくお願いいたします。」 そう手話と共に伝えると、彼女は拍手をしながら喜んでくれた。 手に持っているホワイトボードで速達に書き、コミュニケーションをとってくれる。 『さすがです!でも、静かな所なら、ほぼ言葉を聞き取れますよ。』 「そうなんですね。字を書くのが速いのに綺麗で羨ましいです。」 『だから、字を書いてコミュニケーションをとりたい派です(笑)後、敬語なしでラフな会話がしたいな。』 「良かった、僕も気軽な話し方が好き!」 入った瞬間、生活の工夫が沢山施されながらも可愛らしい内装の部屋に感動した。 生活音が聴こえづらい故だろう。ものが落ちても害がないように、張り付けるタイプの時計や鏡、低めの家具類。だからといって、頭上がもの寂しいことはなく、ロープが連なりそこにエアプランツや洗濯ばさみで挟んだ写真など、落ちても痛くないものが飾られている。 聴覚を補うだけではない。 出入り近くの仕事用のパソコンには、予定がすぐ書けるようにペンとセットで置いてある。 仕事の予定だけではない、震災の備蓄も記入済みだ。食べ物を大切にするのいいね。 更にパソコン台の籠に、数枚の手紙と刃が5枚並んだハサミが入っていて、すぐ下にゴミ箱が置いてある。 この珍しいハサミ、手紙の宛名を切るようだよね。で、すぐ下のゴミ箱に捨てられると。 シュレッダーって手間かかるよね、案外マメに切っちゃった方がいいよね。籠という存在で手紙を溜まらないように制限しているのもなかなか。 そんな工夫を一つ一つ褒め、僕は彼女の部屋を命名した。 「ライフハックの宝庫だ・・!凄い、見てて楽しい!」
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