05:ことりちゃん

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得意気な顔をして、彼女はボードに文字を書いていく。 『この植物達も、空気を綺麗にしてくれるものをセレクトしているの!』 「そうなんだ!空気清浄機いらずでいいなぁ。この、ハリネズミの鉢に植物が入ってるの可愛い!」 『お気に入り!この部屋自体がお気に入りすぎて、最低限しか外に出ない(笑)』 「一人暮らし楽しんでるね。」 『楽しい!親が心配性で不安がってるけど、案外大丈夫なのになー。』 「ねぇ。何も不安になる要素はないのにね。」 そんな僕の意見に一瞬キョトンとしたが、すぐさま満面の笑みを見せてくれた。 『珍しい意見!大抵、大変だねとか、偉いねって言われるのに。』 「その返しって、なんか壁を感じる。ここまで部屋を整えてたら、どんな人より楽しく暮らせてるのに。」 『だよねぇ。久保君もライフハック好きそうだね?』 「うん。」 『どんな工夫してる?』 「部屋の片付け苦手だから、そもそも何も置かない!」 そう言った瞬間彼女はブッと吹き出し、口を押さえ声を出さずに笑いを堪えている。 もっと堂々と爆笑していいのに。でも、その仕草や彼女の雰囲気自体が、朝お世話になっているお天気お姉さんに似ている。可愛い。 ふと思うと、彼女にあだ名をまだつけていない。 お天気お姉さん? うーん、しっくりしないなぁ。 『置かないって、極端(笑)』 「でも、掃除機も楽になる。あっ!僕もキッチンで豆苗育ててるよ。人参の葉も育ててるんだね!飾り葉?」 『うん!隅々までよく見てるなぁ。』 キッチンのライフハックも、なんか凄そう。 特に冷蔵庫。 食材を冷凍庫にぶちこむ以外何もせず、度々消費期限をきらしてしまう。 「ねぇ、冷蔵庫の中見て良い?」 「!?」 凄く驚かれた後に、ムッとした表情で大きくボードに『×』と書き、頬を膨らませた。 「そっかぁ。ボチボチ消費期限をきらせちゃうから、工夫知りたかったな。備蓄品も大切にするから、中を参考にしたかった。」 『食べ物腐らせちゃうの、確かに良くない。』 「ね。ワサビとか、たまに使う調味料が特に。でもお刺身食べると沢山ワサビ欲しくなるからどうしても買っちゃう。」 彼女は少し悩んでから『○』とボードに書き、冷蔵庫に誘い込んで見せてくれた。
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