06:ボクはクボ

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「ギャハハッ!横田マジありえね~!」 「横田先輩、流石にそれ選んじゃったら、バッドエンド進んじゃいますって!」 朝の事務所。 スマホを弄る横田君の周りに、2人の従業員がいる。 「久保先輩、おはようございます!」 「皆、横田君に群がってどうしたの?」 「横田が一生懸命、無料フリーゲームの久保さんの心をゲットしようとしてるんですよ。」 「えっ?」 「このゲーム、最近流行っている恋愛シュミレーションゲームで、ヒロインが全然攻略出来ないんです。で、外見や中身も久保さんとソックリ。」 画面を覗くと、バッドエンドという文字と主人公らしき少女が木にぶら下げられ顔を青くしている。 横田君、何をしてこうなった。 次の画面に進むと、僕と似ているキャラクターが意地悪そうに笑っている。 タイトルは、「掴めない彼」。作者名は「on-chan」。 on-chan。 one-chan。 おねーちゃん。このイラストの感じといい、あのおねーちゃんだ。 「うぁぁっ~、もう久保さんなかなかゲットできな・・って、本物!」 「プッ・・アハハハハッ!モデル料支払って欲しいレベルでソックリ!」 おねーちゃん、すごいなぁ。自分で道を切り開いている。 関わったお客様が、人生にいい方向に進んでいるのは見てて気持ちがいい。 今日のスケジュール。 週1回の店独自の性病検査をした後、午前にお客様を1人相手にしたらフリー。 多額の借金持ちの割りに、僕は時間がある方だ。 1日お客様が3人続く日も多いけど、基本は2人と3人を交互に繰り返し、週1は性病検査と1人のお客様を相手にするのが僕のお休み日。 ただそんなゆとりのある日だからこそ、こわいひとがクセのあるお客様を入れる事が多い。 今日のお客様は、利用回数は5回目。 精神病院から退院すると、お母さんのご希望で僕を雇われる。 年数の経った家の前につくと、何かが勢いよく倒れる音が聞こえ体が硬直してしまうが、息を整え笑顔を作り中に入った。
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