06:ボクはクボ

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「すばる、気持ち良かった?次からは、アナタが女の子を気持ちよくさせるのよ。セックスは、女性を気持ち良くさせるもの。分かった?」 そんな母の教えで、僕は勃起出来なくなった。 でも構わず、母が体力しだい僕にセックスのテクニックを教えてくれる。 「痛い・・うん、そうよ・・これぐらいの力・・。でも、女の子によって好む力が違うの・・。言葉じゃなく、ちゃんと表情で判断するのよ?」 「うん。」 こうやって倒れるまでの5年間、僕は母を気持ち良くする訓練をしていた。 だから、今のPUZZLEでトップに立つ僕がいる。 いるのだけど、勃起を促す薬を使う18歳まで生きた心地がしなかったし、僕の長所である笑顔が消えて、感情が無に近かった。 インポになった日から、駅や高い所に行くと何かに引きずられ飛び込みたくなる衝動にかられてしまう。 何のために生きているのか、分からなくなった。 だからこそ分かる。性は、生きるために必要な欲求。 こわいひとは僕の家族が嫌いで、よく悪口を言ってくる。 基本スルーするのだが、「お前は母親にレイプされた」という言葉だけは同意している。 生きる原動力を奪われた事に対し、怒りを覚えている。 でも、倒れるまで僕の側にいてくれた人。 このようにしたのも、考えがあってだ。 僕の事を愛してくれている。そして、僕といる事に絶望した。 お互いに、複雑な存在だね。 「母さん、そろそろ行くね。じゃあね。」 最後まで母は眼球で、僕を追ってくれた。 さて、この後どうしようかな。 とりあえず、遅めの昼ごはん。病院の食堂、安くて美味しいんだよね。 そう胸をときめかせながら1階へと続くエスカレーターを下っていくと、車椅子に乗ったことりちゃんが自動販売機の前にいるのが見えた。 早足で近付くと、足の負傷だけでなく左腕もギブスをつける彼女がいる。
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