06:ボクはクボ

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だから、ことりちゃんの言葉が嬉しい。 人から見たら障害なのに、彼女は僕の特性を好きと言ってくれた。 ちょっと泣きそうになったけど、グッと堪えて笑顔を作る。 『手帳を取るって事は、薬を使ってるの?』 「使ってないよ。」 『なんで手帳とったの?』 「借金がある。障害年金で賄ってたり、交通機関よく使うから優遇して貰うため。」 『そっか、余計な事を言ってごめん。なんか久保君の場合、障害って言葉が障害になってしまっていると感じたから。』 図星をつかれ、少し黙りこんでしまう僕。 ことりちゃんはその間、服を直した後に手を握ってくれる。 『ねぇ、久保君。この入館証、お見舞い用だよね?誰に会いに来てるの?』 「母さん。脳卒中で、寝たきりなんだ。」 『ごめんね、私、久保君の事を調べちゃった。お母さん、久保君に酷い事をしてる。』 「ネットで簡単に出てくるもんね、僕の情報。引かないの?」 『引かないよ。むしろ、両親に怒っている。ねぇ、弁護士さんの所に相談すれば、久保君が借金を返済しなくても済む手段があるんじゃないかな。』 「僕の両親が作った借金。家族だから、その一員の僕も返したい。」 『家族とはいえ、久保君が返す必要のないお金だよ。むしろ、その家族と縁を切っておかしくない。』 「僕の家族を否定しないで!!借金だって会社を作って働こうとしてた故だし、何より仲良かったんだよ!?僕に障害があったから、バラバラになっちゃって・・。」 顔を近付け感情的に怒鳴りつけている事に気が付き、途中で言葉を止めた。だが心が収まらず、それは涙として溢れてしまう。 『障害に関しては、誰も悪くないから辛いね。』 ことりちゃんは、自ら口づけをしてくれた。頑張って口の中をまさぐり舌をいれてくれたが、辺りを舐める不器用なキスだ。 そうだ、誰も悪くないんだ。 心の片隅で自分を責めていたが、悪くない。むしろ、ハンデを乗り越えて工夫する僕の事が大好きだ。人から見たら出来て当たり前の事かもしれないけど、僕にとっては大きな壁だったりする。それに周りを気にせず登ろうとする自分が好き。 そうだよ、誰も悪くない。僕は心の中でことりちゃんに同意した。
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