01:横田君

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僕の人生の豊かさを左右する、1日1個の楽しみ。そんな貴重な時間を、キャラメル1個で終わらすなんて。 「・・・・。」 「せっかくの俺の頂きものだ、目の前で美味しそうに食って終わらせろよ。」 「・・・・。」 「よし、食ったな。これで1日1個のお菓子タイム終了だな。」 「・・・・。」 駄々下がりなテンションの中、こわいひとはニコヤカに手を振って見送ってくれる。 「・・はぁ・・。」 事務所を出て、真っ先に出てしまったため息。 そんな声と同時に、泣きじゃくる横田君が出てきた。一刻も早く事務所を出た様が伝わる。 「ぐ、ぐぼざ・・あ、ありが、ありがどうございまず・・・!」 「いえいえ。」 「あの、ぢょっと、まっでで下さい・・!」 そう言い残し、横田君はどこか駆けて行ってしまった。 ・・待つって何時までだろう。 僕が遅刻してお客様を怒らせたとしても、ペナルティーが罰されるのは元凶で利益の薄い横田君なんだけどなぁ。 とりあえず、店を出なきゃいけない時間用のタイマーをセットしておいた。 横田君は、勤務歴3ヶ月の長身の新人だ。 縦に長いけど横田なんだと名前はすぐに覚えられたけど、特徴のない顔で、店以外で会ったら彼が横田君だと認識出来ないであろう。 そんな彼は、すぐに戻ってきた。 先程より少し顔色が良くなって、袋いっぱいのお菓子を僕の前に差し出しながら。 「久保さん、よかったらこれ・・!」 「ありがとう。でも、お菓子は1日1個だから平気だよ。」 「遠慮しないで下さい!あ、もちろんこれでちゃらになったと思ってませんよ!俺もいつか久保さんを助けられるよう頑張ります・・!」 「遠慮じゃないから大丈夫。お菓子は1日1個だから、逆にあると食べたくなっちゃうから要らないんだ。」 「そういや、久保さんって美意識高いって聞いてますが、糖質制限もしてるんですか?」 「それもあるけど、お菓子は1日1個なんだ。あると食べたくなっちゃって、イライラするんだ。」 「自分に厳しいんですね・・!でも、ちょっとくらい・・。」 「お菓子は、1日1個なんだ。」 大人げなく、最後は少しキツく言ってしまった。再度涙目になる横田君を見て、申し訳なく思ってしまう。 「ごめんね、本当に気持ちで充分だから。」 「はぁ・・。してあげたいのに、一方的になっちゃう。だから俺は駄目なんだ・・。」 なんか、想像以上に落ち込んでいるなぁ。彼の今後の仕事に差し支えそうだし、話しを聞いてあげた方がいいかな。後15分位しかないけど。 「してあげたいのにって気持ちは、何よりも大事だと思うけどなぁ。特に、この仕事は。お客様を嫌悪に見る従業員が多いなか、横田君の意識は、僕的に大好きだよ。」
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