07:雪華さん

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「でもまぁお前の事だから、タイマーを切らず待っているんだろ?」 「うん。ご飯は買っちゃうかもしれないけど、扉の前で待ってる。深刻そうだし、ゆっくりお客様の話し聞いてあげたい。」 「そうか。やっぱりお前はこの仕事が向いてるな。ただ、さっき2回目を利用としていた客がキャンセルを出した。次はリピーターを増やすよう気張れよ。」 電話がきれ、スマホの画面はお客様の地図が現れた。 近くに、ご飯を買える場所はあるかな。お客様も真っ直ぐ帰るだろうしお客様の分も。 スマホのナビに導かれ、僕はコンビニに入った。 心は女性で体が男となると、食べ物の嗜好はどうなるんだろう?女性扱いでヘルシーか、体に合わせてガッツリか。 いや、そもそもその考えが偏見だ。女性だってガッツリ食べる人もいるし、男性でヘルシーを好む人もいる。 で、結局どうしよう。ただでさえ、人の事を考えて選ぶの苦手なのに。 まぁいいや、僕が食べたいものを買えば。 買い物を済ませた僕は、アパートの扉の前に座り込んだ。 ボッーとして、時間をやり過ごすのは得意だ。ラインを弄りつつXジェンダーを調べて待っていると、アパートの駐輪場にバイクが入り、乗ってた男性が駆け足で僕に近付いてきた。 「ごめん・・!久保君だよね?ずっとここで待たせてしまったかな。気にせず店に入って貰えば良かったのに。」 「いえ、好き好んでここで待っていたんで。仕事を遅くまでお疲れ様です。お腹すいてませんか?勝手ながらも、コンビニで2人分買ってきちゃいました。一緒に食べませんか?」 「気が利くね!さすがナンバー1。忘れないうちに今お金を渡すよ。」 「いや、これぐらいだったら別に。お財布にしまうの面倒なので大丈夫です。」 「・・そうなんだ?じゃあご馳走になろうかな。ありがとう。」 そう言いながらヘルメットを外す男性。 驚いた、美形だ。 だが、どことなく体に力が入って緊張している様に見える。 扉を開けると、エアコンが既についており心地の良い温度で、モノトーン調の部屋が出迎えてくれた。
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