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「寒かったよね。本当にごめんね。」
「大丈夫ですよ。それより、女性の服に着替えたいですよね。シャワー浴びつつ着替えますか?」
「えっ・・?」
「いや、なんか無理をして男をやっている感じがしたので。仕草や言葉が不自然というか・・。あ、それともお腹すいてますか?先に食べちゃいます?」
「いや、着替えたい・・男のスーツは苦手・・。」
「そうですよね。じゃあ、食事を温めて待ってます。レンジや食器使っていいですか?」
「えぇ・・。ありがとう、久保君。」
そう優しく微笑む姿は、女性そのもの。声に至っては、落ち着いた違和感のない女性の声だ。自然な彼女を見れ、僕も安心でき笑ってしまった。
だがその後、凄く不審そうな顔をして僕を見てくる。何かしてしまったかな。
「久保君、シャワーに入ってくる前にちょっといい?」
「えっ?」
「身分証明見せてくれる?」
「あっ、はい。」
僕は鞄に縫い付けられた保険証を、中から覗き込む形で彼女に見せた。
「何で、鞄に縫い付けてるの?」
「よく物を落とすので、店長が失くさなよう縫い付けてくれたんです。」
「お母さんみたいな人だね。」
「赤の他人だけどね。いつも先回りして、防いでくれる。」
「本当に、お母さんみたいな人ね。とりあえず、22歳と確認出来て安心した。」
「年齢疑ってました?」
「若く見える、羨ましい。じゃあ、シャワー浴びてくる。お腹減ってたら先食べててね。私は何でもいいから。」
浴室に消える彼女。
僕はカウンターキッチンで、お総菜類を温める。
凄くいい香りがすると思ったら、ルームフレグランスを置いてるんだ。爽やかな海っぽい感じ。
そんな繊細な部屋の楽しみをしている一方で、キッチンは少し荒れていた。
朝は急いで食べた痕跡が残っている。とりあえず、水につけおきかな。
てか、バターが出しっぱなしだ。勿体ない。風味は落ちるのかもしれないけど、冷蔵庫にいれたらまだ使えるよね?
そんな訳で冷蔵庫をあけると、作りおきの鍋と、宅配のバランスがとれた小分けの食材が入っておりジャンキーなものは入ってない。健康的な冷蔵庫だと感想を持ちながらしまいこんだ。
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